2009 Fiscal Year Annual Research Report
高反応性活性種を用いた不安定炭素カチオンの発生と反応のインテグレーション
Project/Area Number |
07J09093
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松本 浩一 Kyoto University, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ジアリールジスルフィド / 電解酸化 / 炭素カチオン / 有機活性種 / 電子移動 / 分子軌道計算 |
Research Abstract |
本年度は、前年度までに達成した有機反応(ArSSArの電極酸化によるArS(ArSSAr)^+の生成、および本活性種を用いたインダイレクト・カチオンプール法の開発)の反応機構の解析を詳細に行うために分子軌道計算を用いて検討した。まず、ArSSArの低温電解酸化反応により発生・蓄積した有機イオウカチオン種ArS(ArSSAr)^+の生成メカニズムを検討した。ArSSAr(Ar=p-FC_6H_4)の1電子酸化により発生すると考えられるArSSAr^+やArSなど、反応に関与すると考えられる分子、活性種について分子軌道計算により最安定構造を求めるとともに反応エネルギーを算出した。計算方法は、MP2/6-311+G(3df,2p)//mPW1K/6-31+G(2d)を採用した。その結果、ArSSArの1電子酸化により生成するArSSAr^+のS-S結合開裂のエネルギーは中性のArSSAr分子のS-S結合開裂のエネルギーよりも大きくなっており、電極上でArSSArの1電子酸化で生成したArSSAr^+のS-S結合は単独で結合開裂する可能性は低いことが示唆された。様々な反応経路を検討したところ、ArSSAr^+とArSSArが反応することでArS(ArSSAr)^+が生成する経路(ArSSAr^++ArSSAr→ArS(ArSSAr)^++1/2ArSSAr)は20.0kcal/molの発熱反応であり、エネルギー的に最も有利な経路であることを明らかにした。このように、ArSSArの電解酸化で生じるArSSAr^+種のS-S結合は単独で結合開裂しているのではなく、もう一分子のArSSArにより、それが促進されていることが明らかになった。現在、ArS(ArSSAr)^+が生成する経路がおおよそに分かってきたので、本カチオン種生成に関する遷移状態を求めるためにさらなる検討をしている段階であるとともに、インダイレクト・カチオンプール法によるアルコキシカルベニウムイオン生成に関しても、分子軌道計算によりその解析を検討している。
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