2007 Fiscal Year Annual Research Report
分子の構造変化が結晶の表面モルフォロジー変化を誘起する際に寄与する協同効果の解明
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07J09699
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
黒木 瑠美 Kyushu University, 大学院・工学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | フォトクロミズム / フォトメカニカル機構 / 結晶形状変化 |
Research Abstract |
本研究はフォトクロミック分子の異性化による幾何構造変化を利用したナノアクチュエーターの構築を目指し、一分子の幾何構造変化をマクロな材料変形へと繋げる上での必要条件を解明するものである。申請時にはアクチュエータ素子としてジアリールエテン結晶表面を提示したが、近年、結晶表面ではなく結晶の外形が変化する系も発見された。前者がAFMを用いバルク結晶表面におけるナノメートルオーダーの変化を観測するのに対し、後者は光学顕微鏡を用いてμメートルオーダーの結晶の変形を観測する。 平成19年度は、後者の系に関して先行研究の追試を行うと共に試料の作製、及び装置の操作に習熟した。さらに、形状変化を示す系の必要条件を探索する目的で、複数の化合物について結晶の光反応による挙動を確認したが、明確な形状変化は観測できなかった。そこで、先行例と同様の結晶パッキングを持つ化合物の合成を行い(一つは既知、もう一つは新規)、それらの結晶の光反応による形状変化挙動を観測した。結果、結晶はいずれも形状変化を示し、なおかつその変形の様式は両者とも先行研究と同じものであった。この形状変化の様式は先行例と全く同様の機構、すなわち結晶のパッキングと一分子の幾何構造変化に由来する協同効果より説明できた。この結果は、先行研究において示唆にとどまっていた結晶形状変化の機構を強く保証し、その本質を解明していく上で基盤となる非常に重要な知見である。
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