2008 Fiscal Year Annual Research Report
光散乱的手法を用いた血球細胞内ヘモグロビン量と溶血率の計測に関する研究
Project/Area Number |
07J10735
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
迫田 大輔 Tokyo Medical and Dental University, 大学院・医歯学総合研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 循環器系補助デバイス / 赤血球 / 非生理的せん断 / 赤血球解糖系代謝 |
Research Abstract |
循環器系補助デバイス内では非生理的な血流を発生し、血液細胞を損傷させることが問題となっている。本研究では損傷を可視〜近赤外光を用いて非襲侵的に診断する手法の確立、及び非生理的なせん断下における赤血球状態変化に関する生化学的検討を行った。 体外循環用連続流血液ポンプNikkiso HPM-15、小児用人工肺、リザーバーパック、タイゴンチューブから成る循環路内で、新鮮ブタ赤血球とグルコース含有リン酸緩衝生理食塩水の懸濁液を循環させたところ、赤血球の代謝によって懸濁液中のグルコースが減少していった。このグルコース濃度の減衰は、静置した血液中のグルコース濃度の減衰より早く、血液ポンプが発生するせん断によって、赤血球の解糖系代謝が亢進されたことが示された。この代謝亢進のメカニズムは、せん断によって細胞内に侵入した余剰なナトリウムイオンをナトリウムポンプによって膜外へ排出させる際に必要なATPを、グルコースを代謝することで産生し続けるためであることが示唆された。また、せん断下で赤血球がグルコースを代謝し続けることにより、血中グルコースが消費され不足していくことで、ATPが産生できなくなり、赤血球形状および体積の変化が起こったことを計測した。以上のことから、従来まではせん断による赤血球の損傷は機械的な損傷概念でしか報告されていなかったが、せん断が代謝に影響を与えることで、細胞内エネルギーの不足をもたらすことで赤血球が損傷していくという新しい生化学的概念に基づいた損傷モデルが考えられた。血中グルコースレベルによって、赤血球の損傷度が変化することが明らかとなった。これを利用して、開発した血液ポンプの血液適合性を定量的に評価することが可能になることが考えられた。
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