2008 Fiscal Year Annual Research Report
1970年代における日本の防衛政策--「吉田路線」体系化の過程と要因
Project/Area Number |
07J11668
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
吉田 真吾 Keio University, 法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | デタント期 / 日米同盟の制度化 / 共通脅威 / 米軍のプレゼンス縮小 / 「二重のデタント」の成立 / 「信頼性の圧力」 / 相互不安 / 「正当性の危機」 |
Research Abstract |
平成20年度、実績報告者は、学会での報告と論文の公刊という形で、研究成果を発表した。第一に、2008年6月、Asian Studies Conference Japanにおいて、「デタント期における日米同盟の制度化」に関するペーパーを提出した上で、報告を行った。その課題は、同盟が制度化されるのは構成国にとっての共通脅威が高まるときだという理論的予測とは裏腹に、冷戦から生じる国際的な緊張が緩和し、日米両国にとっての外的脅威が低下した70年代のデタント期に日米同盟が制度化されたことの原因を明らかにすることにある。そして、この報告は、米軍のプレゼンス縮小と米中・米ソ「二重のデタント」の成立という当時の東アジアにおける国際変動から生じた、日米の政策当局者に対する「信頼性の圧力」が日米同盟の制度化を促したという議論を展開した。国際システム・レベルの要因と当局者レベルの要因の連関に着目し、日米双方の視点を統合したこの議論は、70年代における日米同盟の制度化の原因を日本もしくは米国の政策当局者個人の構想に還元する傾向がある従来の解釈の修正を試みたものと評価できる。第二に、2009年3月には、以上の報告の一部を加筆・修正した「デタントの成立と日米同盟」と題する論考が『国際安全保障』に掲載された。この論考は、米ソ・米中「二重のデタント」の成立という東アジア国際システムの変動が、日米両国の政策当局者の相互不安と同時に、日本国内における日米同盟の「正当性の危機」という二つの要因を引き起こし、それらが同盟の制度化に作用したという因果関係を解明した。従来、70年代初頭に日米同盟の制度化が進んだという史実自体が研究史上の空白となってきたことに鑑みれば、日米両国の一次史料を駆使し、複数の新発見を盛り込んだこの論考は、学界における知見の蓄積に少なからず貢献できたといえる。
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