2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J11917
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
寺澤 悠理 Keio University, 社会学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 情動 / 身体 / fMRI(機能的脳画像イメージング) / 脳損傷例 / 前頭葉腹側部 / SCR(皮膚コンダクタンス反応) / 記憶 |
Research Abstract |
本研究では社会的状況において他者との円滑な相互作用の実現を支持する情動を、社会的情動という枠組みで捉え、その認知・脳・身体を介したメカニズムを理解することを目的としている。この目的に基づき、本年度は以下の2つの研究を行った。1:脳損傷例を対象にした情動の喚起を伴う記憶のメカニズムに関する研究、2:自身の身体状態と感情状態を意識するときに特殊あるいは共通の神経基盤を探るfMRI研究。1は昨年度から継続している研究で、情動を喚起する画像の偶発学習課題を脳損傷例を対象に実施し、学習・再認時の自律神経反応と再認成績、及び、脳損傷部位との関連について検討を行っている。前頭葉腹側部以外の損傷例では、学習フェーズでの画像提示に伴って、情動反応の生起を示唆する大きなSCRが観察されたが、前頭葉腹側部損傷例ではほとんど観察されなかった。また、腹側部損傷例の再認課題における正答率は、その他の部位の損傷例よりも有意に低く、虚再認率が高かった。以上の結果から、前頭葉腹側部の損傷に伴って、情動反応に関わる自律神経活動の調整が不適切になり、記憶のパフォーマンスの低下を導いている可能性が示唆された。この結果は、以前から指摘されている前頭葉腹側部の情動の喚起における重要性を確認するとともに、環境と自身の身体反応、感情状態の不調が後の記憶成績にも影響を及ぼすことを新たに指摘するものである。2は継続中であるが、情動を感じるメカニズムにおいて、身体状態を意識することの重要性を神経基盤の共通性から明らかにすることを目指している。同時に、感情状態の意識のみに関わる神経基盤を特定し、主観的に経験する感情が身体状態への意識とどのように関わっているのかを明らかにすることを目指す。
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