1996 Fiscal Year Annual Research Report
サハリンにおける縄文海進期以降の人間をとりまく環境史
Project/Area Number |
08041033
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
辻 誠一郎 国立歴史民俗博物館, 歴史研究部, 助教授 (20137186)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
VASILEVSKI A ユジノ=サハリンスク教育大学, 助教授
GOLUBEV Vale ユジノ=サハリンスク教育大学, 教授
能城 修一 農林水産省, 森林総合研究所, 主任研究官
南木 睦彦 流通科学大学, 商学部, 助教授 (80209824)
鈴木 三男 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (80111483)
前田 潮 筑波大学, 歴史・人類学系, 助教授 (40015897)
西本 豊弘 国立歴史民族博物館, 考古研究部, 助教授 (70145580)
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Keywords | 縄文海進 / 完新世 / 北方文化 / 植生変遷 / 気候変化 / サハリン |
Research Abstract |
平成8年度の調査研究は,サハリン南部のオホーツク沿岸域における野外調査と採取資料の古環境解析のための室内分析に当てた。 野外調査は,トンナイチャー帯における現在の植物相・植物調査,およびセデフ湖沿岸の埋積物の採取,堆積物の諸性質の記載,植物遺体群の抽出からなり,7月下旬〜8月中旬に実施した。前者では植物さく葉標本・材幹標本の採取と登録を行い,すべての標本を古植物学的研究の比較資・資料として日本に持ちかえり,東京大学・東北大学・国立歴史民族博物館の3カ所で保管標本として登録できるよう準備を進めた。また,後者ではシンウォール・サンプラーによる直径6cmノボーリング資料の採取を主体にし,合計18か所において総計25mの柱状資料(コア)を採取することができた。 日本に持ちかえった採取資料の室内分析の結果,セデフ湖一帯の縄文海進期以降の堆積物は,下位からI〜VIIIの8層に大きく区分され,堆積相および植物遺体群の層位的変動から,海あるいは入江の時代から泥炭地への連続的な堆積環境の変遷が2サイクルあることを見出した。古い方は縄文海進の内湾の時代から湖沼,草本泥炭地,木本泥炭地(湿地林)へと段階的に変遷した。新しい方は,入江かわずかに海水が注ぎ込む湖沼的環境からヨシ泥炭地,ミズゴケ泥炭地へと段階的に変遷した。このことは,縄文海進後に新しい海進があったことを示すもので,考古遺物による編年からオホーツク文化期にあたることが分かった。セデフ湖周辺の大地上にはオホーツク文化期の竪穴住居跡が約3千見出されており,オホーツク文化期の居住と文化の繁栄が海進あるいはそれをもたらす温暖気候と深く関係していることを明らかにした。
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