1996 Fiscal Year Annual Research Report
現代中国の国民統合:周辺地域のエスニック諸集団に関する学術調査
Project/Area Number |
08041068
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
毛里 和子 横浜市立大学, 国際文化学部, 教授 (40200323)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新免 康 東京外国語大学, アジアアフリカ言語文化研究所, 助教授 (10235781)
横山 廣子 国立民族学博物館, 第二研究部, 助教授 (30143324)
中見 立夫 東京外国語大学, アジアアフリカ言語文化研究所, 助教授 (20134752)
若林 正丈 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (60114716)
西村 成雄 大阪外国語大学, 外国語学部, 教授 (60030160)
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Keywords | 少数民族 / ウイグル人 / 台湾 / 国民統合 / 新〓 / カザフスタン / モンゴル / 雲南 |
Research Abstract |
1.広大な周縁地域に55の少数民族を抱え、台湾・香港など異質な政治共同体を統合しようとしている中国は、90年代からとみに遠心力が強くなっている。国民統合という観点からすれば一種のアイデンティティの危機である。今回の学術調査は、その周縁地域、とくに西の新〓地区および西南の雲南地区の民族状況、および隣接し、同胞民族を共有しているモンゴルとカザフスタンで民族状況や中国との関係を調べることにあった。 2.学術調査は3班に分かれて行われた。第一斑5名は、8-9月にかけて、モンゴルのウランバートル、新〓ウルムチ市、カシュガル地区、カザフスタンのアルマトィで研究者や政府機関の人員との意見交換と懇談、現地の調査(言語教育、宗教活動、家系調査、市場調査など)を行った。第二斑1名は1月にモンゴルのウランバートルで中国-モンゴル間の文化と人の交流の調査、モンゴル-中国関係の文献収集を行い、第三斑1名は中国西南部雲南省で白族など少数民族の生活・宗教・経済・観光事業などの実態を調査した。 3.3つの地域・国家で「三様のナショナリズム」が観察できたことは意味深い。民主化、「第三の隣人」とモンゴル国のルーツ探しが新生モンゴルの国民的課題であり、落ち着いたナショナリズムと自身が見て取れた。カザフスタンでは、経済の停滞、テクノクラート不足、権威主義的政治などのため、独立したばかりにしてはナショナリズムは活気づいていない。他方、中国のウイグル人地区=カシュガルでは、激しい社会変動と市場経済化の中で、ナショナルなもの、固有の文化を主張したくてもできないウイグル人の鬱屈したナショナリズムが感じられた。中央政府の民族地区に対す強いコントロールもその背景にある。
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