1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08041121
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
中西 準子 横浜国立大学, 環境科学研究センター, 教授 (10010836)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾張 真則 東京大学, 環境安全研究センター, 助教授 (70160950)
OIKAWA Teiic パラ連邦大学, 熱帯医学研究センター, 助教授
DA Costa Man パラ連邦大学, 熱帯医学研究センター, 助教授
SILVA Pinhei パラ連邦大学, 熱帯医学研究センター, 教授
原田 正純 熊本大学, 医学部, 助教授 (00040519)
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Keywords | アマゾン / 水銀汚染 / 有機水銀中毒 / リスク評価 / 健康影響 |
Research Abstract |
ブラジル共和国パラ連邦大学熱帯医学研究センターとの共同で、アマゾン川流域での水銀汚染が人の健康に及ぼす影響を、1992年から1998年まで調査した。人の頭髪中水銀値を測定することにより、人の健康へのリスクを推定すると同時に、臨床診断によりメチル水銀中毒症状の有無を調べた。主たる調査対象地区は、アマゾン川支流タパジョス川中流部の3漁村であるが、他にいくつかの漁村、金採掘現場、都市などについても、比較のために調査を行った。中流部3漁村でのサンプル数454の頭髪中水銀値の濃度分析と統計的解析から、これらの漁村住民の知覚障害発生確率は約4%と推定された。また、20〜39歳までの女性57人を対象にした調査から、新生児の歩行障害(歩き出す時期の遅れ)もありうることが推定された。 これをふまえて、頭髪中総水銀濃度20ppm以上の居住者と妊婦を中心に、医師の診断を交えた追跡調査を行った。その結果、低濃度汚染による慢性有機水銀中毒症と断定できる人を3名、その可能性があると思われる人を5名、確認した。3漁村に似た状況の孤立漁村の数は多く、他の漁村も同程度のリスクがあると考えられる。 漁村住民の頭髪中水銀濃度は、90%がメチル水銀であることから、魚食による経口曝露と考えられる。そこで、タパジョス川流域の魚12種20サンプルの水銀濃度を分析した結果、日本における海水魚の健康基準値0.4ppmを超えるものが、大型肉食魚から3種、淡水魚の基準値1ppmを超えるものが1種確認された。小型草食魚は低濃度である。魚種による水銀濃度の違いがわかったことにより、妊婦や頭髪中総水銀濃度の高い人達に対して、どの魚を食べるべきかについて指導すれば、ある程度リスク削減が可能である。 漁村近傍の3地点における、川の底質の水銀濃度を分析した。昨年度までの6地点を加えた9地点で、0.1ppmを超えるものが1つしかなく、日本やカナダなどの水銀汚染事例に比較すると、底質中水銀値は極めて低い。このことは、アマゾン川の自然条件の特殊性を示唆するものである。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] M.Harada,J.Nakanishi,S.Konuma,K,Ohno他: "The Present Mercury Contents of Scalp Hair and Clinical Symptoms in Inhabitants of the Minamata Area" ENVIRONMENTAL RESEARCH,SECTION A. 77. 160-164 (1998)