Research Abstract |
研究代表者は,ルーメンプロトゾアがルーメンバクテリアの細胞壁ペプチドグリカンに含まれる2,6-ジアミノピメリン酸(DAP)からリジンを合成することを発見し,プロトゾアのルーメン内生息の意義の一つを解明した。本研究では,ルーメンプロトゾアの一種Entodinium caudatumを用いて,DAP脱炭酸酵素(DDCase)が本当にプロトゾア自体のものかどうかを確認するため,DAP脱炭酸酵素をコードする遺伝子(lysA)をE.caudatumのcDNAライブラリーからスクリーニングし,その塩基配列を決定し,細菌のものと比較検討することを目的とすした.しかし,平成8および9年度の研究結果から,ルーメンプロトゾアのltsAについてエンドシンビオント由来である可能性を示唆する新しい研究の展開があり,平成10年度は,この点に集中して研究を行った.まず,E.caudatumをポッターのホモジナイザーにより氷冷下で破壊し,8,000gおよび35,000gで遠心分離してそれぞれの上清掖と沈殿物のDDCase活性を測定し,8,000gおよび37,000gの沈殿画分に高い活性゚を認めた.上清液にはそれほど高い活性は認められなかった.次に,8,000gおよび37,000g沈殿画分を透過型電子顕微鏡で観察すると,8,000g画分では同じ形をしたバクテリア様顆粒が小胞に包まれているのが観察され,37,000gでは同顆粒が露出した形で観察された.他方で,DDCaseの精製を進め,SDS-PAGEにより1本のバンドが得られ,分子量は54,000と推定された.この酵素タンパク質を抗原としてウサギによりポリクロナール抗体を作成し,これにより,バクテリア様顆粒がDDcaseの源泉かどうかを目下検討中である.これと併行して,上記の8,000gおよび37,000g沈殿からのDNAの抽出を試みた結果,アガロース電気泳動により明確なDNAのバンドが確認された.目下,これをEcoRIなとできり,大腸菌のリジン要求株に挿入して,ltsAのスクリーニングをする段階にある.本研究では,lysAの所在について,大きな示唆を得ることができた.
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