1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08044261
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
那波 宏之 新潟大学, 脳研究所, 教授 (50183083)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀川 洋 日本学術振興会, 特別研究員
永野 隆 新潟大学, 脳研究所, 助手 (70272854)
澁木 克栄 新潟大学, 脳研究所, 教授 (40146163)
CLINE Holly コールドスプリングハーバー研究所, 主任研究員
ENIKOLOPOV G コールドスプリングハーバー研究所, 主任研究員
YI Zhong コールドスプリングハーバー研究所, 主任研究員
SILVA Alcino コールドスプリングハーバー研究所, 主任研究員
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Keywords | 神経栄養性因子 / シナプス / 可塑性 / ノックアウトマウス / ラジオイムノアッセイ |
Research Abstract |
神経系に於てシナプスの可塑性の関連する神経の表現型は、神経伝達物質そのものも含め非常に多様であるが、個々の神経細胞はそのうちから数種類のシナプス分子を発生期に撰択・発現し、その量を調節することで脳内の情報を正確に伝達、保持する必要がある。つまり脳は、多様な神経細胞により構築された異なるシナプス回路を基盤にし、個々の神経細胞が適切な神経伝達することで機能している。実際、多くの神経・精神疾患において、神経伝達物質・その受容体の産生異常が見られることも、伝達物質の適切な合成制御が重要であることを裏ずけている。 これまでの培養神経細胞を使った我々の研究で、神経成長因子(NGF)に代表される液性細胞間生理活性物質が未梢神経細胞の神経伝達物質の表現形を、また中枢神経系の神経ペプチドの合成、伝達物質受容体の発現を制御していることが判明した。これらの研究は、我々のグループのコールドスプリングハーバー研究所での発見に起因するものであるが、本国際学術研究もこのコールドスプリングハーバー研究所在籍時代の共同研究実績に基づき神経栄養性因子とその関連遺伝子のノックアウトマウスを解析することで、in vivoにおける神経栄養性因子のシナプス発達での機能とそのメカニズムを探るものである。特に本年度においては神経栄養性因子BDNF、神経栄養性因子の細胞内情報伝達系に関与するといわれているNF1蛋白、神経栄養性因子の刺激により活性化されると予想される蛋白リン酸化酵素FynとαCAMK2,神経栄養性因子の刺激により制御されうる転写制御因子、CREBをその研究対象として絞り、これらの遺伝子を欠損するノックアウトマウスを解析した。日本側研究者がコールドスプリングハーバー研究所のSilva博士のところを訪ね、これらのノックアウトマウスの提供を受けたが、解析のための在日日数が少なかったので、大部分の脳サンプルは解剖後、凍結させて持ち帰った。神経栄養性因子により制御されていると考えられる標的遺伝子、またはそのタンパクのうちシナプス機能と関連する神経伝達物質とその受容体の発現を中心に解析を進めている。残念ながらソマトスタチン等の神経伝達物質の含量には、ラジオイムノアッセイで検討するかぎりコントロール群とこれらノックアウトマウス群に有為な変化は見られていない。対応する伝達物質受容体の発現は、一部のノックアウトマウスで異常が見られたので現在その再現性を確認中である。相手が動物であり生まれる日時もばらついているため、統計処理に十分な数の同じ月齢のホモザイゴ-ト、ヘテロザイゴ-ト、野性型のマウスを短期間の滞在中に集めるのはかなり無理があり、また、ある種のノックアウトマウスに関しては、適当なホモザイゴ-トが居合わせなかったという問題点が生じた。この点を来年度は解消できるよう計画したい。
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