1996 Fiscal Year Annual Research Report
タイ肝吸虫感染による肝内胆管癌発生機序に関する研究
Project/Area Number |
08045064
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
矢谷 隆一 三重大学, 医学部, 教授 (80024636)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
TESANA Smarn タイ, コンケーン大学・医学部, 助教授
PAIROJKUL Ch タイ, コンケーン大学・医学部, 教授
SITHITHAWORN パイブーン タイ, コンケーン大学・医学部, 助教授
VATANASAPT V タイ, コンケーン大学・医学部附属病院, 教授
安藤 勝彦 三重大学, 医学部, 助教授 (90024710)
鎮西 康雄 三重大学, 医学部, 教授 (60024709)
川原田 嘉文 三重大学, 医学部, 教授 (40024814)
坂倉 照よ 三重大学, 医学部, 教授 (80073120)
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Keywords | タイ肝吸虫 / 肝内胆管癌 / 疫学 / 動物実験 |
Research Abstract |
タイ東北地方農村はタイ肝吸虫の濃厚感染地域であり、一方この地域では肝内胆管癌の発生が極めて高率で、以前から両者の相関が指摘されている。本研究では肝内胆管癌発生と肝吸虫感染の実態調査を行うと共に、寄生虫感染による肝内胆管癌患者より得た癌化組織の病理的変化の特徴を明らかにする。またモデル実験動物を用いて、肝吸虫感染と発癌物質による胆管細胞の腫瘍化過程を病理学的に検討し、癌遺伝子の活性化を免疫組織化学的・分子遺伝学的解析を行って、タイ肝吸虫による肝内胆管癌発生誘導機序を解明するのが本研究の目的である。 平成8年度における調査研究で以下の点が明らかになった。 1.肝吸虫濃厚感染地域の中間宿主の貝類及び淡水魚の種類及びそれらの感染率を調査をしたところ、住民が食している淡水魚に特に肝吸虫のメタセルカリアの感染率が高いことが判明した。 2.動物実験の基礎となる肝吸虫の実験室内飼育技術の確立のため、中間宿主貝の飼育・淡水魚への感染・動物及び人への感染形態であるメタセルカリアの回収などの技術を確立し、このメタセルカリアをハムスター与えると成虫にまで発育することが判明し、今後の実験感染が可能になった。 3.肝吸虫感染によるタイ人肝内胆管癌患者組織及び結石が主な原因の(肝吸虫感染が原因ではない)日本人肝内胆管癌患者組織の病理組織学的、及び免疫染色による癌遺伝子、癌抑制遺伝子蛋白の発現を比較すると、組織型に乳頭状腺癌を含む症例、p53強陽性例がタイ症例に多くみられたが、c-erbB-2蛋白発現には差がなかった。またMIB1L.I.による増殖活性もタイ症例が高かった。これらの結果は、疫学的背景の差による発癌に関与する癌関連遺伝子、癌発生部位の違いを示唆するものと考えている。
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