1996 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトおよびチンパンジーにおける非音声的コミュニケーション
Project/Area Number |
08202215
|
Research Institution | Oita Prefectual College of Arts and Culture |
Principal Investigator |
板倉 昭二 大分県立芸術文化短期大学, コミュニケーション学科, 助教授 (50211735)
|
Keywords | チンパンジー / 乳幼児 / 視覚的共同注意 / Eye Direction Detecor / 指さし / pincer grip |
Research Abstract |
本年度は、ヒトを対象として、視覚的共同注意の影響や視線探知器(Eye Direction Detecor:EDD)の検討、そしてチンパンジーを対象として、指さしと関連があると考えられる物のつかみ方(以下pincer gripとする)の発達についての検討を行った。 まず、乳幼児を対象とした刺激注視場面で、母親の指さしや声かけによるある特定の刺激に対する注意の喚起と、刺激自体の物理的変化による注意の喚起との比較を試みた。注意の喚起という機能的な作用は同じであるが、後続して同一の刺激事象に対した場合、母親の注意の喚起の方が、物理的な変化による注意の喚起の場合よりも、より乳幼児の注視行動に影響を与えることがわかった。こうした方法で、視覚的共同注意の質的側面に踏み込めるこもしれないことが示唆された。 われわれは、目や目様の刺激に対して特に高い感受性(EDD)を有しているとされ、それは進化論的な産物であるとされる。habituation/dishabituation法を用いて、乳幼児のEDDを検討した。顔の線画や顔写真の各パ-ツ(目、鼻、口)をひとつずつ変化させた刺激では、目を変化させたものに対して、もっとも長い注視時間の増加が見られた。これはEDDの機能的な存在をうかがわせる結果である。 また、チンパンジーを対象としてpincer gripの発達の実験的分析を行った。3種類の大きさのリンゴ片をチンパンジーに呈示し、そのつまみ方を詳細に分析した。その結果、従来まではチンパンジーには見られないとされていたpincer gripがチンパンジーにもみられたこと、しかしながら、その頻度は若い個体ではきわめて少なく、ある程度の成熟(今回は8歳以上)がなければ出現しないことがわかった。ヒト乳児のデータと比較すると、チンパンジーでは発達のスパンがかなり遅いことわかった。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] 板倉 昭二: "まなざしを共有することの意味" 別冊「発達」. 19. 51-60 (1996)
-
[Publications] Itakura,S & Anderson,J.R: "Learning to use experimenter-given cues durng object-choice tasks by a capuchin monkey" Current Psycology of Cognition. 15. 103-112 (1996)
-
[Publications] Itakura,S: "An exploratory study of gaze monitoring in nonhuman primates." Japanese Psycological Reseach. 38. 174-180 (1996)
-
[Publications] Itakura,S: "Manual action in infant chimpangees : A preliminarystudy" Perceptual & Motor Skills. 83. 411-414 (1996)
-
[Publications] 板倉 昭二: "他者の心を理解する-その発達と進化" 岩波「科学」. (印刷中). (1997)
-
[Publications] 板倉 昭二: "霊長類動物によるヒトの心の理解-ヒト以外の霊長類における「心の理論」-" 心理学評論. (印刷中). (1997)