1996 Fiscal Year Annual Research Report
自然科学分野の論文と口頭発表のデータベース構築とディスコース分析
Project/Area Number |
08207236
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Research Institution | Tezukayama College |
Principal Investigator |
梅咲 敦子 帝塚山短期大学, 文芸学科, 助教授 (20269963)
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Keywords | コーパス言語学 / コーパス / ディスコース分析 / ディスコース / 結束性 / 主題部 / ESP / テキスト言語学 |
Research Abstract |
本研究は、英語を母語とする同一科学者による同じタイトルの自然科学分野の口頭発表と論文を収集したテキストデータベース(コーパス)の構築と公開をめざしている。本コーパスは、自然科学分野について話す際と書く際の英語の相違及び相違の要因を探る目的に最も適した特殊コーパスといえる。データ収集方法は、自然科学分野の国際会議で録音した口頭発表を文字化し、論文は口頭発表と同一著者、同一タイトルのものを会議のプロシ-ディングズから抜き出しOCRで読み、機械可読形式にする。コーパス構築・公開は3年計画である。本年度は、現在までに4対(計約22,000語)を収集完了し、本コーパスの意義を明確にするためにディスコース分析を行なった。4対の論文と口頭発表について、ディスコースの枠組みをつくる主要な手段ある主題構成と主題中の結束手段について調べた。Brown & Yule(1983)に従い、節の最も左の構成要素を主題とみなしすべて抽出した。主題部の結束手段についてはHalliday & Hasan(1976)に示された分類項目を使用した。結果として、主題の統語形式については、定動詞節、等位接続詞と関係詞、代名詞で表される主題の頻度が論文より口頭発表のほうが高く、名詞句で表される主題の頻度は論文のほうが高い。統語上の機能については、論文と口頭発表に差がなく、結束手段については、語彙的結束は論文のほうが多く、連結詞、付加的連結詞による結束および無結束手段は口頭発表のほうが多い。結束相手の位置については、主題部は論文では口頭発表より、直前の主題・題術部、そして題術部ではなく主題部に結束相手がある場合が多いことが解った。以上の結果をもとに、口頭発表と論文におけるこれらの英語の相違を説明できるディスコース形成モデルを提示した。ディスコース生成の方策が論文と口頭発表で異なるために英語の相違が生じるというメカニズムを示した。
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[Publications] 梅咲敦子: "自然科学分野の論文と口頭発表のディスコース分析" 1996年度「人文科学とコンピュータ」シンポジウム予稿集. 33-42 (1996)
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[Publications] 梅咲敦子: "英語の特殊コーパス構築をその利用法:自然科学分野の英語論文と口頭発表のペアコーパスを例に" 情報処理学会研究報告. 97-CH-33. 1-6 (1997)
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[Publications] 梅咲敦子: "自然科学分野における文章英語と口頭英語のディスコース分析(1)-主題構成と結束手段を中心に-" 帝塚山短期大学紀要. 34. 83-94 (1997)