1996 Fiscal Year Annual Research Report
東アジア国際関係の変容と中国の対外認識をめぐる歴史的研究
Project/Area Number |
08208207
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
茂木 敏夫 静岡県立大学, 国際関係学部, 講師 (10239577)
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Keywords | 中華帝国(中華世界) / 徳治 / 教化 / 版図 / 朝貢 / 近代世界 / 国民国家 / 華僑 |
Research Abstract |
本研究は2つの主要な部分からなる。第1に、前近代からの中華帝国の構造変動についての考察。第2に、アジア・太平洋地域との関わりから、1870-80年代にいわゆる棄民政策から保護政策に転換した華僑・華人政策の変化についての考察。 1.中華帝国の構造変動について まず伝統的な中華帝国の支配の論理を、王土思想による版図において機能する徳治として整理し、その特徴を教化-化外の論理に着目して考える。それが19世紀後半以降、近代世界と対峙しつつ、新疆省や台湾省の設置などにみられるような、近代世界の領土支配と同質の支配体制に再編される。その際、この再編は当初、伝統的価値のさらなる実現として正当化されていた(それ故、カッコつきの「近代」的再編とする)。それが日清戦争後、中華帝国が崩壊したことにより、中国も近代的国民国家を創出する課題が共有されるうになった(カッコを外した近代的に再編が課題となる)。帝国主義の圧力のもと「救亡」実現するために、近代的国民国家創出は、国民による参加の側面を軽視して、国家への糾合・動員としての側面を肥大化させてしまった。 2.華僑・華人政策について 伝統的な朝貢体制は、朝貢貿易を担当し東南アジアの南洋物産をもちらすなど中国に利益をもたらす華僑・華人を消極的に保護・掌握する体制だった。それが、1870-80年代以後、中華帝国全体の再編の一環として、華僑・華人を積極的に、貧しい華僑・華人労働者も含めて例外なく統合するように変化していった。しかし、そこには伝統と連続性も色濃く見られる。
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[Publications] 茂木敏夫: "書評 大谷敏夫『清代政治思想と阿片戦争』" 東洋史研究. 55巻. 147-154 (1996)
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[Publications] 茂木敏夫: "変容する近代東アジアの国際秩序" 山川出版社, 96 (1997)