1996 Fiscal Year Annual Research Report
ファンデルワールス分子を用いて衝突の配向を制御した化学反応-ベクトル相関分光による反応ダイナミックスの解明-
Project/Area Number |
08218229
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤村 陽 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (00222266)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶本 興亜 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (30029483)
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Keywords | 酸素原子 / 水素分子 / 亜酸化窒素分子 / 炭化水素分子 / 反応動力学 / 微分散乱断面積 / ドップラー分光 |
Research Abstract |
気相素反応のダイナミックスを明らかにする上で生成分子の振動回転状態分布と散乱角度分布は最も基本的な情報である。これまでは実験的な困難から主にどちらか一方の分布測定から議論されてきたが、そのような不完全な状態選別実験から導かれた反応ダイナミックスの描像は大いに誤っている可能性が近年の理論計算などから予測されている。こうした観点から、本研究では高分解能偏光ドップラー分光法を用いて、O(^1D)原子と幾つかの分子の反応について生成分子の状態選別をした散乱角度分布を測定した。最終的にはクラスターを用いて衝突の配向を規定した化学反応への適用を目指しているが、測定・解析方法などのノウハウの確立のため、現段階では低圧の混合気体による通常の二分子反応に焦点を絞っている。 N_2Oと反応分子をフローさせ、193nm光によるN_2Oの光分解でO(^1D)を生成した。反応の生成分子は適当な遅延時間ののち高分解能波長可変色素レーザー光で検出し、そのドップラースペクトルの線形の解析から、重心系でO(^1D)原子が跳んで来た方向に対する生成分子の散乱角度分布を得た。その結果、(1)O(^1D)+H_2ではυ=4に生成したOHはこれまでの理論計算とは異なって殆ど後方散乱しており、このような単純な系でもab initio計算されたポテンシャル曲面に改良の余地が十分あることが示された。(2)O(^1D)+N_2Oで生成したNOは遷移状態のONNO系がさほど安定な中間体でないにもかかわらず振動・回転・並進エネルギー分布だけでなく角度分布も統計的に近い分布をしており、直接機構と錯合体機構といった反応の単純な分類の妥当性について問題提起をした。(3)O(^1D)+CH_4,C_2H_6,C_2H_4で生成したOHの散乱角度分布は炭化水素のサイズと回転準位に依存して違いが観測された。今後さらに測定を重ねて、これまで振動回転分布だけから議論されてきた異なる回転分布を与える二つの反応機構の競合について直接的な知見を基に議論を行っていく。
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[Publications] Andrew J.Alexander: "An experimental and quasiclassical study of the product state resolved stereodynamics of the reaction : O(^1D_2)+H_2 (υ=0) → OH (X^2Π_<3/2> ; υ=0,N,f)+H" Chemical Physics Letters. 262(5). 589-597 (1996)
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[Publications] Takashige Fujiwara: "Rotational coherence spectroscopy of 9,9'-byanthyl and its van der Waals complexes with Ar and H_2O" Chemical Physics Letters. 261(1,2). 201-207 (1996)