1996 Fiscal Year Annual Research Report
クモ毒素の化学合成とそれらの生物活性発現機構に関する研究
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08219201
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
宮下 正昭 北海道大学, 大学院・理学研究科, 教授 (50006326)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土岐 節 ダイセル化学工業, 総合研究所, 研究員
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Keywords | クモ毒素 / ジョロウグモの毒素 / ネフィラトキシン / 構造活性相関 / 化学合成 / ポリアミン / グルタミン酸遮断活性 / 生理活性試験 |
Research Abstract |
ジョロウグモの毒素として,これまでにJSTX,NSTX,NPTXと命名された20種余りの毒素が単離されているが,いずれも芳香族カルボン酸,アミノ酸,およびポリアミンから成る構造的に新しい型の神経毒である.これらの毒素は節足動物や哺乳類のグルタミン酸よる神経伝達を強力かつ特異的に遮断することから,グルタミン酸による神経伝達を解明するための化学種として非常に注目されている.しかし,何れのクモ毒素も天然からの入手は極めて困難であり,神経生理学の研究を進展させるためにも化学合成による量的供給が不可欠である. 本研究は化学合成によるクモ毒素の供給ルートを拓くとともに、関連化合物の合成を行い,構造活性相関を明かにし,クモ毒の活性発現機構の解明に資することを目的とする.ジョロウグモの毒素には種々のポリアミンが構成要素として含まれており,これらのポリアミン類をいかに効率よく合成するかという点がクモ毒合成上の重要課題である.これらの問題点を解決するためアジド等価体を用いるポリアミン合成法を考案し,これまでに6種のネフィラトキシン類(NPTX-7,8,9,10,11,12)の全合成を達成し,これらのクモ毒素の化学合成による効率的な供給ルートを拓いた. 平成8年度は,構造活性相関の観点からD-アミノ酸を組み込んだD-NPTX-8および12の合成を行うと共に,合成ネフィラトキシンを用いてチャバネゴキブリによるグルタミン酸遮断活性を調べた.その結果,天然品を用いた生理活性試験の結果とは全く逆に,グルタミン酸遮断活性が最も弱いと思われていたNPTX-12が最も強く,反対に最も強いと思われていたNPTX-9のグルタミン酸遮断活性は最も弱いことが判明した.このようにして化学合成を通じてネフィラトキシン類の系統的な活性試験を行い,生理活性ならびに構造活性相関に関する新しい知見と情報を得ることができた.
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