1996 Fiscal Year Annual Research Report
高機能を付与した人工補酵素の構築と分子内電子移動過程の解明
Project/Area Number |
08231226
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大倉 一郎 東京工業大学, 生命理工学部, 教授 (90089821)
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Keywords | ポルフィリン / ビオローゲン / レーザーフラッシュ法 / 分子内電子移動反応 / 光水素発生 |
Research Abstract |
高機能を有する酵素基質の開発を行なった。すなわち、新規な光増感剤と電子伝達体とを結合し、光励起分子内電子移動が容易に進行する高機能性錯体の合成を行ない、この錯体が1分子で光増感剤と電子伝達体との両方の機能を持つことを明らかにした。 具体的にはビオローゲンと電子伝達体としたポルフィリンを合成し、ビオローゲン結合型ポルフィリンの構造と機能との関係を調べた。蛍光強度、蛍光寿命、T-T吸収の減衰とメチレン鎖長との関係を調べ、特にポルフィリンの光励起一重項状態を経由したメチルビオローゲンへの電子移動過程に焦点を当てて実験を行った。 ビオローゲン結合型ポルフィリンの蛍光強度は、ビオローゲンの結合していないポルフィリンの蛍光強度と比べて小さく、メチレン鎖長が短くなるほど小さくなることがわかった。かなわち、メチレン鎖長が短くなるほどビオローゲンによる蛍光の消光がよく起こっていることを示している。ビオローゲン結合型ポルフィリンではいずれのメチレン鎖長の場合にも蛍光の減衰は2成分であった。長寿命の蛍光を示す成分はビオローゲンの結合していないポルフィリンの寿命とほぼ同一であるが、短寿命成分はメチレン鎖長に大きく依存していることがわかった。これらのビオローゲン結合型ポルフィリンには2種類のコンフォーメーションがあり、短寿命成分は分子内電子移動が可能なコンフォーメーション(コンプレックスコンフォーマ-)に起因していると思われた。ビオローゲン結合型亜鉛ポルフィリンではT-T吸収の減衰に対応して還元型ビオローゲンの生成も観測される。さらに生成した亜鉛ポルフィリンカチオンと還元型ビオローゲンとの反応(逆反応)過程を測定した。その結果、還元型ビオローゲンの寿命は約1μsと長寿命であることがわかった。このビオローゲン結合型ポルフィリンと酵素ヒドロゲナーゼを組み合わせ、光水素発生に成功している。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] T.Takeno,J.Hirota and I.Okura: "Photoinduced hydrogen evolution with viologen-linked zinc porphyrins in surfactant micelles" Porphyrins. 5. 21-25 (1996)
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[Publications] N.Fukuhara,T.Hiraishi,T.Kamachi and I.Okura: "Quenching of photoexcited triplet state of Zn-TPPS by hydrogenase-cytochrome C3 complex and the role of the complex in photoinduced hydrogen evolution system" Porphyrins. 5. 27-32 (1996)
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[Publications] F.Hasumi,C.Teshima and I.Okura: "Synthesis of xylitol by reduction of xylulose with the combination of hydrogenase and xylulose reductase" Chem.Lett.597-598 (1996)
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[Publications] Y.Seki,M.Takeguchi and I.Okura: "Purification and properties of bilirubin oxidase from Penicillium janthinellum" J.Biotechnol.46. 145-151 (1996)
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[Publications] F.Hasumi,K.Fukuoka,S.Adachi,Y.Miyamoto and I.Okura: "Synthesis of alanine and leucine by reductive amination of 2-oxoic acid with the combination of hydrogenase and dehydrogenase" Appl.Biochem.Biotechnol.56. 341-344 (1996)
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[Publications] Y.Amao,and I.Okura: "Effective photoinduced hydrogen evolution with hydrogenase in surfactant micelles." J.Mol.Catal.105. 125-130 (1996)
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[Publications] 大倉一郎(分担): "ポリフィリン・ヘムの生命科学" 東京化学同人, 215 (1996)
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[Publications] 大倉一郎(分担): "生物工学英語入門" 講談社サイエンテフィック, 142 (1996)