1996 Fiscal Year Annual Research Report
分子歪みが誘起する新たな結晶の素構造と固体物性に関する研究
Project/Area Number |
08231230
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
水口 仁 横浜国立大学, 教育学部・化学教室, 教授 (90281005)
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Keywords | 有機顔料 / 電子スペクトル / 結晶構造 / 相転移 / X線回析 / 赤外線吸収スペクトル |
Research Abstract |
有機分子性結晶では構成分子は中心対称(Ci)を持つものが多く、“杉綾模様"(herringbone)と呼ばれる積層構造を取る事が圧倒的に多い。しかし、分子性結晶の中でも、分子が溶液から結晶化する際に分子の対称性が崩れ、シアニン色素のJ-会合体に似た分子配列(“レンガ塀のレンガ":bricks in a brick wall)を取るものが見つかっている。このような素構造を取ると、同じ分子であっても、光学吸収の長波長化、更に、光電導ならびに蛍光の著しい増加が認められる事が多い。筆者は、この素構造の発現の原因は分子が歪む際に誘起される双極子モーメントにあると考え、中心対称が崩れ易いビス(4-t-ブチルフェニル)ジケトピロロピロール。この分子では嵩高いtert-ブチル基の付いたベンゼン環がピロロピロール発色団に単結合で結合したものである。この為、単結合の回転角度が発色団の両側で異なると言うだけで、対称性がC_iからC_lに降下する。2ゾーン式の単結晶育成装置を作製し,アルゴンをキャリヤ-・ガスとしてビス(4-t-プチルフェニル)ジケトピロロピロールの単結晶を育成した。構造解析の結果、ベンゼン環はピロロピロール発色団(heterocyclic ring)に対し、プロペラ型でそれぞれ4.9゚,8.0゚の角度をなし、対称中心が消失した構造である事が判明した。従って、結晶を構成する分子は電気双極子モーメントを有し、予測した素構造(“レンガ塀のレンガ")を取っている事も確かめられた。今後は本化合物の電子構造を早急に解明し、新規な素構造が誘起する光電導ならびに蛍光等の固体物性を明らかにする。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] J.Mizuguchi G.Rihs: "Molecular distortion and π-π interactions in the solid state of titanylphthalocyanine" Mol.Cryst.Liq.Cryst.278. 47-56 (1996)
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[Publications] J.Mizuguchi: "5,15-Diaza-6,16-dihydroxytetrabenzo[b,e,k,n]perylene" Acta Cryst.C52. 2315-2317 (1996)
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[Publications] J.Mizuguchi: "Structural and optical properties of 5,15-diaza-6,16-dihydroxy-tetrabenzo[b,e,k,n]perylene" Dyes and Pigments. 29(印刷中). (1997)
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[Publications] H.Otani Y.Sato J.Mizuguchi: "Spectral and conformational change in novel 8,8-dicyano-3- (4'-hydroxy) phenylheptafulvenes" Dyes and Pigments. 29(印刷中). (1997)
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[Publications] 水口 仁: "チオピロロピロールの固体スペクトルと光ディスクへの応用" 日本結晶学会誌. 38(印刷中). (1997)
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[Publications] 水口 仁: "ピロロピロール顔料とエレクトロニクスへの応用" 色材協会誌. 70(印刷中). (1997)