1996 Fiscal Year Annual Research Report
集団の進化を創出するマクロレベルとミクロレベルの相互作用の検出
Project/Area Number |
08233207
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
河田 雅圭 静岡大学, 教育学部, 助教授 (90204734)
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Keywords | 個体ベースモデル / 絶滅 / 集団選択 |
Research Abstract |
進化のプロセスにおける集団選択の重要性はこれまで多く論争されてきた。多くの集団選択のモデルは集団の間の移動や分散が小さいほど集団選択が効果的であると結論している。しかし、個体の分散距離や移住は同時に多くの要因(集団間の遺伝的変異、絶滅率、集団生成率、局所的密度制御など)に影響する。これらの要因は同時異なる影響を集団選択の有効性に与える。数理モデルでは、これらの要因を独立のパラメタとして用い、しばしば、はじめにこれらの異なるパラメタの関係を仮定していた。しかし、これらは多くの要因の間の相互作用から生じる現象である。そこで、本研究では、個体の繁殖と分散のみを仮定した人工生命シミュレーションを行った。その人工生命モデルでは、絶滅、個体群サイズ。集団間の遺伝的変異、集団の生成等の集団の減少は個体の繁殖と分散の結果として現れる。利他行動に影響する遺伝子座をもつ人工生命個体を、13のパッチ上の環境でシミュレートした。個体の繁殖は、まわりの利他行動をする個体の数とまわりの個体数によって決定される。子どもは親から標準偏差σ_d、平均0の正規乱数で決定した。結果は、利他行動をする遺伝子が広がる確率は、分散距離がσ_d=50までのとき次第に増加し、その後分散距離が増加するにしたがって、減少した。このことは、利他行動遺伝が広がる確率は分散距離がある程度低い時に最大になるが、それ以下の低いときには減少することがわかった。この結果は、利他行動遺伝子の頻度の低い集団での高い絶滅率と利他個体の高い移住率という集団選択の2つの要因、から説明できるかもしれない。集団の絶滅と生成という要因による集団選択だけでは利他行動遺伝子の進化は説明できないかもしれない。しかし、この研究は、ある程度の分散による効果が、集団選択による利他行動遺伝子の進化が可能であることを示した。
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