1996 Fiscal Year Annual Research Report
核分裂とマイクロクラスター分裂の比較研究-量子崩壊と熱崩壊の機構-
Project/Area Number |
08240204
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
滝川 昇 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (00125600)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 正典 石巻専修大学, 理工学部, 講師 (50221049)
小野 章 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (20281959)
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Keywords | マイクロクラスター / マイクロクラスター分裂 / 核分裂 / 表面張力 / 臨界サイズ / 相関エネルギー / GW近似 / 重イオン核融合 |
Research Abstract |
本研究計画は、原子核及びマイクロクラスターの量子的及び熱的崩壊の機構を比較解明する事によって、両者の類似性と異質性を明らかにする事を目的としている。マイクロクラスターの分裂に関する興味深い研究課題の一つは、多価に帯電したマイクロクラスターが核分裂によって崩壊するか、蒸発過程によって崩壊するかの境界を与える、いわゆる臨界クラスターサイズである。これまでは、バルクな系での表面張力を用いた臨界クラスターサイズの評価が行われ、臨界サイズが大きいときは、実験値を比較的よく再現することが出来た。臨界クラスターサイズが小さい場合の実験値と理論値の食い違いの原因を解明するために、我々は、表面張力のサイズ依存性を調べ、小さなマイクロクラスターでは、表面張力のクラスターサイズ依存性が無視できないことを明らかにした。この研究の中で、マイクロクラスターの物性を正しく記述するためには、相関エネルギーの正しい取扱いが必要であることに注目し、通常用いられる局所密度近似を改善して、Naクラスターに対しいわゆるGW近似による計算を行い、ホール状態のエネルギーはより深く、粒子状態のエネルギーはより高くなることを示した。現在は、これらの結果に基づくマイクロクラスターの分裂や光吸収などの研究を進めている。本研究のテーマは、マイクロクラスターの分裂と核分裂の類似性及び相違について研究することであるが、後者に関連して、その逆過程である重イオン核融合反応の研究が大いに進んだ。主な研究成果は以下のとおりである。(1)重イオン核融合反応に対する原子核の表面振動の影響においては、高次の結合効果が極めて重要である。(2)励起エネルギーが大きな入射核の表面振動は重イオン核融合反応に対する障壁分布の形には影響せず、位置をずらすたけである。(3)重イオン核融合反応に対する障壁分布は散乱核の表面振動における非調和性に極めて敏感である。
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[Publications] K. Hagino: "Thermal fission rate around superfluid-normal phase transition" Physical Review C. 53. 1840-1844 (1996)
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[Publications] K. Hagino: "Validity of the linear coupling approximation in heavy-ion fusion reactinos at subbarrier energies" Physical Review C. in press.
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[Publications] N. Takigawa: "Heavy-Ion Fusion Reactions as Macroscopic Quantum Tunneling" Progress of Theoretical Physics Supplement. 124. 1-22 (1996)