1996 Fiscal Year Annual Research Report
ロドプシンの発色団レチナ-ル光異性化のトンネル反応機構
Project/Area Number |
08240220
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
垣谷 俊昭 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 教授 (90027350)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秦野 〓世 中京大学, 情報科学部, 教授 (70023356)
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Keywords | バクテリオロドプシン / 超高速光異性化反応 / 励起状態ダイナミックス / 振動の波束 / トンネル遷移 / 化学修飾したレチナ-ル / 分子動力学シミュレーション / 振動波束の位相 |
Research Abstract |
高度好塩菌バクテリオロドプシンの発色団レチナ-ルの超高速光異性化のダイナミックスを明らかにするために吸収スペクトルのフーリエ変換法(FTOA)による解析をおこなった。すなわち、励起フランク・コンドン状態からスタートする振動の波束の運動を時間相関関数(tcf)によって追跡した。今回特に工夫したところは、異性化するボンド13=14のねじれを困難にするように化学修飾した発色団レチナ-ルを組み込んだバクテリオロドプシンに対して解析を行ったことである。その結果を化学修飾しないバクテリオロドプシンの以前の結果と比べると、化学修飾した効果は100fs迄にあまり顕著に現れず、100fsから200fsにかけてtcfの絶対値の明らかな減少(最大-桁)が見られた。また、tcfの位相も100fsから200fsにかけて大きな変化が見られた。200fs以降は化学修飾する、しないに関わらず位相が急激に変化した。これらのことは 13=14 ボンドの本格的な異性化反応は100fs 位から開始され、200fsぐらいからトンネル遷移の状態に入ることを強く示唆する。実際には、tcfの絶対値は100fs迄に急峻な減少(4-5桁)があり、これが異性化反応の運動と直接結びついていないことになる。最近の我々のおこなった分子動力学シミュレーションの結果においても、励起状態ダイナミックスは初期状態により非常に異なった経路を取ることがしめされている。したがって、励起状態にあがった直後の発色団の運動は多岐に渡っており、100fs 程度経ってから、雑多な運動が13=14ボンドのねじれ運動に集約されていく描像が描かれる。今後 FTOA の解析から得られたデータを分子動力学シミュレーションの解析から得られたデータと詳細に比較して、上の結論を確かめる作業を行う予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] R.Akiyama et al.: "Analysis of the temperature dependence of femtosecond excited state dynamics of bacteriorhodopsin by spin-boson model" Chemical Physics Letters. 256. 165-171 (1996)
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[Publications] R.Akiyama et al.: "Analysis of the excited-state dynamics of 13-trans-locked-bacteriorhodopsin" J.Phys.Chem.101. 412-417 (1997)