1996 Fiscal Year Annual Research Report
電気化学的ポテンシャル勾配をもつルテニウム三核錯体のプラジン架橋オリゴマー
Project/Area Number |
08243214
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊藤 翼 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (90007328)
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Keywords | ルテニウム錯体 / 三核錯体 / プラジン架橋オリゴマー / 電気化学 / ポテンシァル勾配 |
Research Abstract |
"Ru_3 (μ_3-O)"型のクラスター骨格をもつルテニウム三核錯体[Ru_3(μ_3-O) (CH_3COO)_6 (L)_3 ]^+は,溶液中において可逆な4段の1電子酸化還元波を示し,その酸化還元電位はターミナル配位子(L)のpK_aに強く依存する.筆者らが合成法を開発した上記三核錯体をユニットとするピラジン架橋多量体において,Lを適当に選択することによりオリゴマー鎖に沿った電気化学的ポテンシャル勾配を形成させることが期待でき,その勾配と電子移動挙動との関連を調べることが本研究の目的である. 本年度の研究において,電気化学的ポテンシャル勾配をもつオリゴマー創生を目指し,(1)傾斜が比較的急なルテニウム三核錯体の三量体,および(2)比較的勾配が緩やかと思われる直鎖状および分岐状四量体の合成を行った.(1)の系においては,三量体の端からターミナル配位子のpK_aが高いものから低いものへ順に配列させ,即ち,左端のユニットには4-ジメチルアミノピリジン(dmap)を,中央のユニットにはピリジン(py)を,右端には4-シアノピリジン(cpy)を配置させ,急勾配の傾斜形成を目指した.(2)の系においては,ターミナル配位子として全ピリジンを用いた。架橋配位子であるピラジンのpK_aはピリジンのそれよりも小さいので外側から内側のユニットに向かう傾斜の緩やかな勾配の形成が期待されるからである.いずれの系についてもその合成に成功し,また,期待どうりの電気化学的ポテンシャル勾配の形成が電気化学的実験により確かめられた.また,勾配の程度と電子移動速度との関連を調べる予備的研究を,二量体について電解分光法により行い,定性的には急勾配の系ほど電子移動速度が速いという結果を得ている.
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[Publications] H. Kido, H. Nagino, and T. Ito: "Stepwise Elongation of a Trinuclear Ruthenium Unitin Pyrazine-Bridged Linear Oligomers with Use of [Ru (μ_3-O) (CH_3COO)_6 (pyridine) (CO) (H_2O) ]" Chemistry Letters. 745-746 (1996)