1996 Fiscal Year Annual Research Report
水素結合性高分子コンプレックスを形成する新高分子の構造制御とその動的応答性
Project/Area Number |
08246247
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
讃井 浩平 上智大学, 理工学部, 教授 (30053664)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 隆史 上智大学, 理工学部, 助手 (80231760)
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Keywords | 不斉識別 / 感温性 / 相転移挙動 / トリプトファン / 光学活性基 / ポリマー / 水素結合 / 高分子コンプレックス |
Research Abstract |
申請者らは、水素結合性相互作用、主にCH/π相互作用に基づいた低分子-高分子間相互作用を利用して、光学活性分子であるアミノ酸に対して不斉分子認識能を有する水溶性高分子を合成した。sec-butylacrylamideとN-isopropylacrylamideから成るコポリマーは、約27℃を境にして低温側で水に溶解し、高温側で水に不溶化する相転移現象を示した。ラセミ体のsec-butylacrylamideユニットを有するコポリマー水溶液は、L-又はD-Trpを添加してもほとんどその相転移挙動に変化が見られなかった。これに対し、(R)-sec-butylacrylamideユニットを含んだコポリマー水溶液に、D-Trpのみを溶解させると相転移現象は僅かに高温側にシフトして認められ、L-Trpのみを溶解させた場合では、その相転移現象は顕著に高温側にシフトした。また、(S)-sec-butylacrylamideユニットを含むコポリマー水溶液では、逆にL-Trpのみの共存下ではその変化が少なく、D-Trpのみを溶解させた場合に相転移現象が高温側で認められた。これら相転移現象が高温側で観察されたのは、それぞれのsec-butylacrylamideユニット中の不斉点に対して、D-もしくはL-Trpの不斉点がCH/π相互作用を起こす環境場を選択し、その相互作用の結果、コポリマー鎖の親水性度が上昇したことに起因している。これを違う観点から見れば、外部に存在する光学活性化合物により、高分子鎖の取り得る相状態が影響を受けることを示唆している。 今後、この光学活性なsec-butylacrylamideユニットを1つの成分とするハイドロゲルやブロック共重合体を合成する。そして、外部刺激に対するその高分子膜内のドメインの水和挙動の変化と溶質物質の透過性を検討する。光学活性分子によりドメインの膨潤度が変化を受け、イオンの透過が制御できれば、細胞膜に存在する不斉分子識別能を伴ったイオンチャンネルやレセプターのバイオミメティックメンブレンの獲得が期待される。
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