1996 Fiscal Year Annual Research Report
心筋の長さ変化に依存して筋小胞体のCa遊離量が変化する生理機序の解明
Project/Area Number |
08258225
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
栗原 敏 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (90057026)
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Keywords | 心筋 / フェレット / Caトランジェント / トロポニン / 筋小胞体 / 甲状腺ホルモン / ミオシン / Ca親和性 |
Research Abstract |
心筋の発生張力を細胞外Ca濃度や初期長を変えて変化させ、Caトランジェントの下降相の減衰時間と発生張力との関係を調べると、減衰時間は発生張力に依存して変化することがわかった。本年度はフェレットに甲状腺ホルモンを投与して甲状腺機能亢進症モデル動物を作成して、その心筋(Hy)におけるCaトランジェントの時間経過と、発生張力との関係を調べた。HyではCaトランジェントのピークはコントロールと変わらなかったが減衰時間が短縮した。また、収縮の時間経過が速くなり、ピークに達する時間と弛緩時間が短縮した。Caトランジェントの変化は筋小胞体のCa取り込みと、Na-Ca交換系による細胞外へのCa排出の速度が速くなったものと考えられる。また、収縮の変化はミオシンのアイソフォームの変化による。細胞外Caイオン濃度を変化させたり、初期長を変化させてCaトランジェントの減衰時間と発生張力の関係を調べると、Hyでは両者には相関関係が見られなかった。また、イソプロテレノール作用下でも同様の結果が得られた。これらの結果は、Hyでは細胞質からのCaイオンの除去が速やかに行われるので、トロポニンのCa親和性変化によって誘起されるCaトランジェントの変化が減弱することを示唆している。また、筋長を変化させた後、時間とともに変化するCaトランジェントのピークは、リアノジン処理やイソプロテレノール処理により消失するので、この遅いCaトランジェントのピークの変化には筋小胞体が関与しているものと考えられた。
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[Publications] Kurihara,S: "Cross-bridge-dependent changes in the intracellular Ca^<2+> concentration in mammalian cardiac muscles" Japanese Hearc Journal. 37. 143-152 (1996)
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[Publications] 栗原敏: "細胞内Ca^<2+>濃度変化による心筋の収縮制御" 東京慈恵会医科大学雑誌. 111・3. 265-278 (1996)
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[Publications] Kurihara,S.: "Effect of developed tension on the time courses of Ca^<2+> transients and tension in ferret myocardium" Cardiovascular Research. 32. 384-390 (1996)
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[Publications] Kurihara,S.: "Intracellular Ca^<2+> transients in response to step length changes in aequorin-injected ferret papillary muscle" Pathophysiology. 253-261 (1996)
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[Publications] Kurihara,S.: "Physiological significance of the change in the Ca^<2+> sensitivity of the contractile elements in cardiac muscle" Molecular and Cellular Mechanisms of Cardiovascular Regulation. 281-290 (1996)
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[Publications] 栗原敏: "心筋収縮性とカルシウム" Clinical Calcium. 6・9. 9-14 (1996)