1996 Fiscal Year Annual Research Report
新発見の接着型プロテアーゼインヒビターとがん細胞の浸潤・転移
Project/Area Number |
08265222
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
広瀬 茂久 東京工業大学, 生命理工学部, 教授 (10134199)
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Keywords | プロテアーゼインヒビター / 接着型インヒビター / 気道上皮細胞 / 小腸の陰窩 / クリプト / エンテロエンドクリン細胞 / インサイチュ ハイブリダイゼーション / 抗体染色 |
Research Abstract |
私たちが発見した新型のプロテアーゼインヒビターは,インヒビター領域のN末端側に接着領域を持ち,働き場所に共有結合でとどまるという風変わりなタンパク質である。このファミリーにはいくつかの同族分子が存在するが、そのうちの2つ(WAP-1,WAP-2)について局在部位を明らかにし,がんの浸潤・転移の基礎的理解に貢献した。成果の概要は以下の通り。1)WAP-1の局在部位:免疫組織化学的にWAP-1の局在部位を細胞レベルで同定した。組織としては,ノーザン解析の結果存在量が比較的多いことがわかっていた気管と大腸を用いた。気管では上皮細胞が非常に濃く染まった。大腸では,陰窩細胞が中程度に染まった。同様の結果は,インサイチュ ハイブリダイゼーションによっても得られた。2)WAP-2の局在部位:WAP-2は,当初SPAI(Sodium,Potassium-ATPase Inhibitor)とよばれ,Na^+,K^+-ATPaseの阻害物質として単離されたが,SPAIとしての活性が弱いために,本来の役割はプロテアーゼインヒビターではないかと考えられている。しかし相手のプロテアーゼに関しては全く不明である。WAP-2は血中にも多量に存在するが,それがどこから来るのかも分かっていない。そこで,これらの問題を解く手がかりを得るために,インサイチュ ハイブリダイゼーションによりWAP-2の局在部位を決定した。ブタの小腸切片を用いて,WAP-2 mRNAの局在を調べたところ,陰窩底部の内分泌細胞(enteroendocrinecells)がきれいに染色された。エンテロエンドクリン細胞は,種々の腸管ペプチドを合成・分泌しており,ここでWAP-2が合成されている事実は,血中のWAP-2源であることを強く示唆する。陰窩でWAP-2が合成される生理的意義等が明らかになれば,私たちが見つけた新型の接着型プロテアーゼインヒビターのよりよき理解,ひいてはその関連領域である「がん細胞の浸潤・転移」の阻止法の開発にもつながるものと期待される。
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[Publications] 広瀬茂久: "糊代をもったタンパク質" 化学と生物. 34. 632-633 (1996)
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[Publications] M.Furukawa 他: "Cryptic origin of SPAI,a plasma protein with a transglutaminase substrate domain and the WAP motif,revealed by in situ hybridization and immunohistochemistry" J.Biol.Chem.271. 29517-29520 (1997)