1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08271217
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川口 三朗 京都大学, 医学研究科, 教授 (70024635)
|
Keywords | 中枢神経軸索の再生 / 後索路 / 脊髄損傷 / 神経修復 |
Research Abstract |
皮膚,筋,関節受容器からの情報を脳に伝える後索路は,長い距離を走行する有髄線維であり,その髄鞘はシュワン細胞に由来する末梢部分とオリゴデンドロサイトに由来する中枢部分から構成されている.この線維は末梢部分では再生するが,再生した軸索は末梢一中枢の移行部を越えては伸びないし,脊髄を上行する部分の損傷では再生は全く起こらないと報告されている.本研究は,それが本当であるか否かを確かめることを目的として以下の実験を行った. エーテル麻酔下に生後10日齢までのラットの椎弓を切除して脊髄を広く露出し,直視下に胸髄下部で両側の後索路を含めて脊髄の半側以上を切断した.切断は安全カミソリを用いて鋭利に行い,軸索の周囲のグリアや細胞外基質の破壊を最小限にとどめ,軸索を誘導するような手掛かりができるだけ失われないことを意図した.一定期間飼育したのち,再生の有無を検索するため,神経節越え順行性標識法により,坐骨神経に小麦胚芽凝集素結合ホ-スラディッシュペルオキシダーゼを注入して後索路を終末に至るまで標識し,また,逆行性標識法により,蛍光色素を薄束核に注入して腰髄の後根神経節細胞を標識することを試みた.その結果,標識された繊維は正常な経路を辿り同側の薄束核に密な終末を形成しており,逆行性に標識された多数の細胞が腰髄の後根神経節に観察された.すなわち,従来の報告とは異なり,切断部の条件さえよければ、後索路は切断部を越えて著名な再生を起こすことが判明した.哺乳動物の中枢神経伝導路の再生が成功しないことを髄鞘やオリゴデンドロサイトの軸索伸長抑制因子に帰せしめる考えが現今有力であるが,本研究結果は再生するかしないかを決めるのはそうした中枢神経系の全体的な条件ではなく,切断部の局所的な条件であることを示している。
|
Research Products
(3 results)
-
[Publications] Kawaguchi,S.,Iwashita,Y.,Murata,M.: "Spontaneous and graft‐induced reconnection of CNS pathways in the rat." Excerpta Medica International Congress Series. 1101. 141‐143 (1996)
-
[Publications] Kikukawa,S.,Kawaguchi,S.: "Regeneration of dorsal column axons after spinal cord injury in young rats." Jpn.J.physiol.46.suppl. S194‐ (1996)
-
[Publications] 川口三郎: "脊髄損傷の神経修復" 神経進歩. 40・5. 845‐855 (1996)