1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08271221
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小倉 明彦 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (30260631)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨永 恵子 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助手 (60256196)
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Keywords | 海馬 / 切片培養 / 伝達効率 / シナプス新生 |
Research Abstract |
昨年度の研究で、海馬切片の安定な回転培養(薄層培養)法を確立した。しかし、この標本中の神経細胞を脂溶性蛍光試薬DiIで染色し、頻回刺激後の形態変化を観察したものの、有意な形態変化を捉えるに至らなかった。その原因として、(1)行った頻回刺激では本標本にLTPなどの可塑性現象を解発できない、(2)DiIが細胞に悪影響を及ぼしたなどの可能性が考えられる以上、「仮想されているようなシナプス新生は起こっていない」とするのは早計である。そこで今年度は(1)(2)について検証した。 海馬切片培養のCA3細胞体層に刺激用、CA1細胞体層に記録用電極をおいて100Hz1秒の刺激を行うと、集合活動電位の振幅2倍以上、持続時間1時間以上の伝達効率増強が約70%の標本で観測された。この増強は、EPSPslopeの鋭角化やスパイク潜時の短縮も伴っており、新鮮切片のLTPと極めて類似していた(ただし、いくつかの点で培養切片特有の現象もみられた)。したがって(1)の問題はない。 (2)の問題を回避するため、クラゲ緑色蛍光蛋白(GFP)のcDNAを導入し、標識することとした。しかし、神経細胞に外来遺伝子を導入することは従来法では困難なため、まず向神経性ウイルスをベクターとして用いる技術の確立を目指した。限定増殖性にしたアデノウィルスに、βアクチンのプロモーターの支配下においたcDNAを組込み、これを初代培養海馬神経細胞に導入することに成功した。試みとして、アミロイド前駆体蛋白(APP)を発現させたところ、興奮性伝達物質グルタミン酸への応答性が有意に増大した。APPの機能解析は本課題が当初掲げた目標ではないが、グルタミン酸感受性の調節は細胞内Ca代謝および細胞の運動性と直接関連するので、この解析を精密化して論文とした。現在、このアデノウィルスベクターを用いて、GFP発現による生体染色を試行中である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Tominaga,K.: "Glutamate responsiveness enhanced in neurons expressing amyloid precursor protein" NeuroReport. (印刷中).
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[Publications] Mochizuki,Y.: "Formation of lipofuscin-like autofluorescent materials in NG108-15 cells:Involvement of lysosomal protein degradation" Gerontology. (印刷中).
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[Publications] Sakai,N.: "Brain-derived neurotrophic factor potentiates spontaneous calcium oscillations in cultured hippocampal neurons" Neuroscience. (印刷中).
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[Publications] Ono,T.: "Activity-dependent expression of parathyroid hormone-related protein(PTHrP)in rat cerebellar granule neurons" J.Neurochem.(印刷中).
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[Publications] K.Shimoji(ed.): "Molecular neurobiology and Brain Ischemia" Springer Verlag, 164
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[Publications] 日本組織培養学会(編): "組織培養の技術・第三版" 朝倉書店, 621