1996 Fiscal Year Annual Research Report
圧縮率から見たタンパク質のコンパクトさと折りたたみ中間体の構造
Project/Area Number |
08272221
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
月向 邦彦 広島大学, 理学部, 教授 (10023467)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大前 英司 広島大学, 理学部, 助手 (30284152)
田村 陽次郎 鈴鹿工業高等専門学校, 一般学科, 助教授 (20163701)
|
Keywords | 圧縮率 / タンパク質 / 折りたたみ中間体 / 構造のゆらぎ |
Research Abstract |
本研究では、以下の3点について部分比容(v)と断熱圧縮率(β_S)の変化を測定し、蛋白質の未変形状態、変形状態および変性中間体の構造について考察した。 (1)卵白リゾチームの塩酸グアニジン変性:低濃度の塩酸グアニジン存在下ではCl-イオンの結合によりvとβ_Sは減少し、未変性分子がコンパクトになる。変性状態のβ_Sは、アミノ酸残基の値に近く、分子はランダムコイルに近い状態までほどけているもとの考えられる。しかし、変性の初期段階では、二次構造の崩壊にもかかわらずコンパクトな構造を保持しており、変性の後半になってパッキング状態が大きく壊れる。これはCl-イオンの結合により、変性の中間段階まではコンパクトな構造をとっていることを示唆する。 (2)チトクロムcのモルテングロビュール(MG)状態のゆらぎ:ポリオールの添加によりチトクロムcはMG状態をとることがわかった、この構造は電解質添加により形成したMG状態より大きなβ_Sを持ち、ゆらぎの大きい構造であることを示している。 (3)ジヒドロ葉酸還元酵素の圧縮率に及ぼすアミノ酸置換の影響:フレキシブルループ中の67位を種々のアミノ酸に置換したところ、置換アミノ酸の疎水性が大きいものほどβ_Sは小さくなり、酵素活性は大きくなった。この結果は、構造のゆらぎが機能発現に関与することを示している。 このように、圧縮率は蛋白質の未変性状態のゆらぎ、変性状態および変性中間体の構造を敏感に反映しており、蛋白質の立体構造構築原理の研究に新たな情報を提供することがわかった。
|
Research Products
(7 results)
-
[Publications] E. Ohmae: "Effects of point Mutations at a Flxible Loop Glmine-67 of Escheriuda coli Dihydrofolate Redutase on the Stability and Function." J. Biochem.119. 703-710 (1996)
-
[Publications] K. Gekko: "A Large Compressibility Change of Protein induced by a Single Amino Acid Substitution." Protein Sci.5. 542-545 (1996)
-
[Publications] E. Ohmae: "Acid and Thermal Unfolding of Escheridua coli Dihydrofolate Redutase." J. Biochem.120. 946-953 (1996)
-
[Publications] Y. Tamura: "Adiabatic Compressibility of Flagellin and Fragellar Filament of Salmonella Tryphimurium." Biophys. Biochim. Acta. (印刷中). (1997)
-
[Publications] 月向邦彦: "硬い蛋白質と軟らかい蛋白質-圧縮率から見た構造のゆらぎ-" 蛋白質・核酸・酵素. 41. 2025-2036 (1996)
-
[Publications] K. Gekko: "High Pressure Bioscience and Biotechnology (R. Hayashi & C. Balny, eds.)(分担)" Elsevier, 6 (1996)
-
[Publications] 月向邦彦: "食品物理化学(松野隆一,矢野俊正編)(分担)" 文永堂出版, 13 (1996)