1996 Fiscal Year Annual Research Report
重水素パルスラベル法によるリゾチーム構造形成過程の詳細解析
Project/Area Number |
08272232
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
瀬川 新一 関西学院大学, 理学部, 教授 (70103132)
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Keywords | 蛋白質の折りたたみ / NMR / リゾチーム / 重水素交換反応 / 構造形成 |
Research Abstract |
リゾチームの主鎖の折畳み過程を観測するために、主鎖アミドプロトンの重水素交換反応と2次元NMR分光法を用いた。あらかじめ完全に重水素化したリゾチームを作製し、これを6M塩酸グアニジン(GuHCl)中に溶解してランダム構造をとらせ、次ぎにこの溶液を軽水で希釈して蛋白質の折畳み反応を開始させた(pH3.0、1.5MGuHCl、25℃)。適当な折畳み反応時間経過後(τ_f)、パルス的に溶液のpHを6.8に上げ再び3.0に戻す。この操作でUnfoldしている主鎖のNHプロトンの軽水素化がパルス的に許されるため、パルスラベル法と呼ばれている(パルス幅約0.5s)。この結果、速く構造形成した部分はパルスラベル交換がプロテクトされ、遅い部分はプロテクトされずにNDがNHに交換される。このサンプルの2次元NMR(COSY)スペクトルを測定すると、折畳み反応の進行の遅い部分が残基レベルの分解能で同定される。τ_fを変えてパルスラベルすると、原子レベルの分解能で折畳み過程の時間変化を追跡することが可能である。パルスラベルの実験には、高速混合反応を連続して3回行う必要があり、ユニソク製のケミカルクェンチミキサ-が用いられた。上記の溶液条件下で、リゾチームの折畳み速度の平均値は円偏光楕円率の時間変化の測定から約6.0sであった。一方、τ_fを1.0sから30sの範囲で変えてパルスラベルしたサンプルのNMR観測の結果から、各残基毎の折畳み速度定数が決定された。リゾチームαドメインのAヘリックスとBヘリックスのアミドプロトンの折畳み速度は、平均値より速く約2.4から4.0sであるが、βドメインのシート構造では、平均値より遅く約8.7から12.7sであった。現在、温度を変えながらこの実験を継続している。一方、リゾチーム主鎖がほどける反応(Unfolding)の速度定数も、GuHCl4.0M、pH3.3、温度20℃で行っている。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Hamada,Daizo: "Non-native α-helical intermediate in the refolding of β-lactoglobulin,a predominantly β-sheet protein" Nature Structural Biology. 3. 868-873 (1996)
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[Publications] Noda, Yasuo: "A Two-Dimensional NMR Study of Exchange Behavior of Amide Hydrogens in a Lysozyme Derivative with an Extra Cross-Link Between Glu35 and Trp108-Quenching of Cooperative Fluctuations and Effects on the Protein Stability" Biopolymers. 41. 131-143 (1997)