1996 Fiscal Year Annual Research Report
ガラス転移点でのトリプシンと水和水の相互作用様式に関する結晶学的構造研究
Project/Area Number |
08272236
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中迫 雅由 理化学研究所, 生物物理研究室, 研究員 (30227764)
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Keywords | 蛋白質の水和 / ガラス転移 / 低温蛋白質結晶解析 / 蛋白質のダイナミクス |
Research Abstract |
本研究では、低温蛋白質X線結晶構造解析によって、(1)水溶性蛋白質の水和構造の詳細な解析、(2)蛋白質熱振動のガラス転移と蛋白質の水和構造様態の関連の探究(3)低温蛋白質X線回折実験技術のより多くの蛋白質立体構造解析への応用を目的として行われた。 (1)トリプシンの3種類の結晶について低温構造解析を行い、詳細な水和構造検討の結果、蛋白質の折れ畳みに不可欠と考えられる水和水およびその結合サイトの同定を行うことができた。また、溶媒領域に露出した疎水性アミノ酸残基の水和形態を直接論じることができた。その結果、疎水性アミノ酸残基の水和は、その周辺に存在する水和サイトに制限されて形成されるため、その溶媒和エネルギーは、それらの環境に大きく依存することが示された。 蛋白質表面の水和水は、蛋白質の原子や他の水和水と水素結合して、蛋白質表面を覆う程度に大きな水和クラスターを形成することが明らかとなった。特に、これらのクラスターは、蛋白質の低振動ダイナミクスを液体窒素温度で凍結していることが強く示唆された。また、同様の解析をシタロン脱水素酵素やイソプロピルリンゴ酸脱水素酵素についても行った。 (2)については、トリプシン結晶に対して、100、115、130、145、160、170、210、293Kの温度で1.6Å分解能での測定と構造精密化を行い、水和構造を比較検討した。100Kから170Kの温度範囲では、水和構造に大きな変化がなかったが、210Kでは、水和水の量が293Kで見い出されたものと大きな差異がないことが明らかとなった。この結果は、蛋白質のガラス性転移が蛋白質表面の水和ネットワークに大きく左右されていることを示す結果である。 (3)本研究で熟成された低温X線結晶構造解析法は、一酸化窒素還元酵素、tRNA合成酵素、Ca-ATPase、キシラーゼの各結晶の回折強度データ収集に適用された。
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[Publications] Nagata et al.: "CryocrysTallography of 3-IsopropyLmatate dehydrogenase from Thermus Thermophiws and is chimeric enzyme" Acta Crystallographica Section D. D52. 623-630 (1996)
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[Publications] 中迫雅由: "蛋白質結晶の液体窒素温度への冷却方法" 生物物理. 36. 110-111 (1996)
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[Publications] 中迫雅由: "蛋白質のX線結晶構造解析" 食品機械装置. 33. 86-96 (1996)
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[Publications] 中迫雅由: "低温下での蛋白質X線結晶構造解析(2)" The Journal of TARA sakabe Project. 2. 114-121 (1996)
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[Publications] 中迫雅由: "低温下での蛋白質X線結晶構造解析(3)" The Journal of TARA sakabe Project. 2. 87-97 (1996)
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[Publications] 遠藤勲: "光応答性ニトリルヒドラターゼ" 蛋白質・核酸酵素. 42. 136-143 (1997)