1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08279227
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤田 一郎 大阪大学, 医学部, 寄附講座客員教授 (60181351)
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Keywords | 視覚認識 / 下側頭葉皮質 / 上側頭溝 / 霊長類 / 記憶学習 |
Research Abstract |
霊長類の側頭葉前部腹側部の大脳皮質は、物体認識を行う上で不可欠である。この領野の細胞の視覚刺激への反応の選択性の程度について、物体の部分的特徴に対してかなり鋭い選択性を持って反応するという報告と、個々の細胞の刺激選択性は非常に低いという報告が存在する。個々の細胞がどのような性質を持つかは、この領域で行われている情報処理の理解にとって重要な考慮材料であり、この食い違いの原因を明らかにする必要がある。この矛盾する2群の研究結果は、1)記録部位の違い(下側頭葉皮質TE野に記録を限っているか、上側頭溝内皮質下壁(STS野)をも含んでいるか)、2)実験が麻酔下それとも覚醒行動中のサルを用いているかの違い、3)ナイーブなサルか学習したサルかの違い、のいずれか、またはその組み合わせに、原因があると考えられる。 本研究では、まず、第一の可能性を検討する目的で、40個の図形刺激に対するTE野とSTS野の細胞の視覚反応性を比較した。その結果、TE野とSTS野の間には、上記の結果の違いを説明する刺激選択性の差異は見いだされなかった。次に、麻酔条件下におけるTE野細胞と覚醒固視タスク遂行中のTE野細胞との間の比較を行ったが、この場合にも、刺激選択性の程度には差異を見いだすことができなかった。ただし、覚醒動物における視覚反応の方が反応強度が強く、また、反応の安定性が高かった。 側頭葉前方腹側部の細胞の刺激選択性の程度がかなり鋭いという報告と、非選択的といって良いほど幅広い刺激反応性を持つという報告の違いは、その記録部位の違いや麻酔か覚醒かという記録動物の条件によらないことが判明した。この2群の報告の間の相違は、テストした刺激が実験動物にとって見慣れたものであるかどうかの違いに起因していると推察される。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Fujita,I.: "Intrinsic connections in the macaque inferior temporal cortex" J.Comp.Neurol.368. 467-486 (1996)
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[Publications] Murayama,Y.: "Contrasting forms of synaptic plasticity in the monkey primary visual and inferotemporal cortices" NeuroRep.8・6(in press). (1997)
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[Publications] Fujita,I.: "Integrative and Molecular Approach to Brain Function" Elsevier, 9 (1996)
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[Publications] Fujita,I.: "The Association Coretex---Structure and Function" Harwood Academic Publ.(in press), (1997)