1996 Fiscal Year Annual Research Report
カルコン誘導体を用いた新しい抗マラリア剤開発の研究
Project/Area Number |
08281215
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Research Institution | Gunma Prefectual College of Health Science |
Principal Investigator |
脇 誠治 群馬県立医療短期大学, その他部局等, 教授 (10056286)
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Keywords | マラリア / 熱帯熱マラリア原虫 / 抗マラリア剤 / カルコン誘導体 |
Research Abstract |
マラリアは感染人口3億人、年間死亡数200万人と推定される現在なお世界で最も重要な感染症の一つである。これまで予防と治療に使われてきたほとんどの抗マラリア剤に対して病原体原虫が薬剤耐性を獲得しつつあり、この感染症制圧のために有効な新治療薬の開発が急務となっている。本研究は新彊甘草に含まれるリコカルコンAの抗マラリア活性に着目し、種々のカルコン誘導体を合成して活性の高い誘導体をスクリーニングし、新しい抗マラリア剤を開発することを目的に行った。カルコン誘導体を40種類合成し、ヒトマラリア原虫培養系を用いて活性をスクリーニングした。その結果、最も活性の高い誘導体として3-オキシ-3'-メチルカルコンを得た。この誘導体の培養マラリア原虫50%増殖抑制濃度は1.3μMであり、リコカルコンAの1/5以下であった。マラリア原虫は輪状体から栄養体、分裂体を経て赤血球から遊離するメロゾイトに至る48時間の増殖サイクルをもつが、このカルコン誘導体はタンパク質や核酸合成の盛んな栄養体に対して強く作用し、数時間後には膜電位が消失して原虫の死が確認された。またこのカルコン誘導体のヒト正常血管内皮細胞とヒト慢性骨髄性白血病細胞に対する毒性試験では40および160μMであり、選択毒性が認められた。マウスへのネズミマラリア原虫の感染の系を用いた3-オキシ-3'-メチルカルコンのin vivo試験で50%原虫血症抑制投与量4.1mg/kg/dayを得たが、完全治療には至らなかった。この理由として薬剤の血中濃度が上がらないこと、および血中に入ても短時間で消失すること等が考えられた。今後本研究は、カルコン誘導体のマラリア原虫増殖抑制の作用機序解明を進めるとともに、生体内に吸収されやすくかつ一定時間は分解されない誘導体の合成を試み、抗マラリア剤としての実用化を計る。
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