環境倫理学の哲学的再検討に関する総合的研究

1997 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 08301001
• Research Institution: Tokyo University of Agriculture and Technology
• Principal Investigator: 鬼頭 秀一 東京農工大学, 農学部, 教授 (40169892)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 林 浩二 千葉県立中央博物館, 教育普及課, 学芸研究員 (20250128) ; 井上 有一 奈良産業大学, 法学部, 助教授 (50203261) ; 横山 輝雄 南山大学, 文学部, 教授 (80148303) ; 森岡 正博 大阪府立大学, 総合科学部, 助教授 (80192780) ; 桑子 敏雄 東京工業大学, 大学院・社会理工学研究科, 教授 (30134422)
• Keywords: 環境哲学 / 環境倫理学 / 人間と自然の関係性 / 生命倫理学 / 科学技術倫理 / 環境教育 / 環境思想 / 所有論

Research Abstract

本研究は、学際的な分野の研究者による相互討論による理論的深化を大きな目的としている。本年度は、研究メンバーのみによる研究会を1回、外部の専門家と研究メンバーのみによる研究会を1回、外部の専門家を招いての公開研究会を4回、総計6回の研究会を行い議論を深めた。
前年度は、環境哲学の大きな枠組みがいかにして構築可能かという総括的な議論から出発したが、今年度は、前年度で議論してきた環境哲学が、ディープ・エコロジーなどの既存の環境哲学の理論とどのような関係を持ちうるのかといった、先行研究に位置づけるための議論(森岡正博、井上有一、桑子敏雄、横山輝雄を中心)を行う一方で、環境哲学の周辺領域である、宗教哲学・宗教人類学(東工大上田紀行氏と森岡正博を中心)、環境教育学(林浩二と森岡正博を中心)、環境社会学(関西学院大学鳥越晧之氏、千葉大学井上孝夫氏、帯広畜産大学関礼子氏、名古屋短期大学井上治子氏と鬼頭秀一を中心)、林政学(東大井上真氏と鬼頭秀一を中心)など、関連のさまざまな学問や議論においてこの環境哲学がどのような意味を持ちうるのか、また、河川行政(建設省河川局宮本氏と森岡正博、井上有一、桑子敏雄、鬼頭秀一を中心)などの具体的な環境問題の事例の中で、検討してきた環境哲学の枠組みがいかにして有効になるのかという観点からの議論を行った。特に、環境哲学の枠組みにおける「所有論」の重要性が前年度に提起されたので、この問題に関して11月に広範な分野の研究者を集めて公開研究会を行った。これらの関連領域との交流、議論を踏まえて、1月には、森岡正博と鬼頭秀一が、環境哲学の枠組みに関する中間的なまとめとなるような問題を提起し、外部の専門家のコメンテ-タを含めて議論を行った。
それらの成果は、各自が独自に論文で発表するとともに、外部の執筆者数名を加えて、『環境を守る-その理念と運動、そして市民』(講座 人間と環境 第12巻)として、昭和堂から出版することになった。

Research Products

• [Publications] 鬼頭秀一: "日本の自然の権利訴訟と生物多様性の保全-アマミノクロウサギに託されたもの" 科学. 63・3. 217-222 (1998)
• [Publications] 鬼頭秀一: "環境倫理" 自然保護ハンドブック(朝倉書店). (印刷中). (1998)
• [Publications] 鬼頭秀一: "環境運動/環境理念研究における「よそ者」論の射程" 環境社会学研究. 4(印刷中). (1998)
• [Publications] 森岡正博: "引き裂かれた生命(7)" 仏教. 39. 147-158 (1997)
• [Publications] 森岡正博: "引き裂かれた生命(8)" 仏教. 40. 171-184 (1997)
• [Publications] 森岡正博: "引き裂かれた生命(9)" 仏教. 41. 123-136 (1997)
• [Publications] 森岡正博: "引き裂かれた生命(10)" 仏教. 42. 52-64 (1998)
• [Publications] 森岡正博: "生命と優生思想" 生命論への視座(大明堂). 115-133 (1998)
• [Publications] 井上有一: "エコロジーの三原則の関する考察-環境持続性,社会的公正,存在の豊かさ" 奈良産業大学紀要. 13. 3-24 (1997)
• [Publications] 井上有一: "COP3を前に-京都会議の主役は誰なのか" 資源環境対策. 33・15. (1997)
• [Publications] 井上有一: "環境NGOと気候変動問題" 軍縮問題資料. 207. (1998)
• [Publications] 横山輝雄: "生命と種の多様性" 新・哲学講義5 コスモロジーの闘争(岩波書店). 5. 111-133 (1997)
• [Publications] 横山輝雄: "進化論と近代日本仏教" 生命論への視座(大明堂). 134-152 (1998)
• [Publications] 桑子敏雄: "空間と身体-新しい哲学の出発-" 東信堂, 256 (1998)
• [Publications] 鬼頭秀一(編著): "環境を守る-その理念と運動,そして市民(講座 人間と環境)" [鬼頭秀一,森岡正博,桑子敏雄,井上有一,林浩二(著)] 昭和堂(印刷中), (1998)