1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08301040
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川合 康三 京都大学, 文学研究科, 教授 (40108965)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
釜谷 武志 神戸大学, 文学部, 助教授 (30152838)
和田 英信 信州大学, 人文学部, 助教授 (20231037)
西上 勝 山形大学, 人文学部, 助教授 (10189277)
乾 源俊 高知大学, 人文学部, 助教授 (00203216)
興膳 宏 京都大学, 文学研究科, 教授 (70023984)
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Keywords | 中国文学史 / 文学史 / 文学史観 / 下塚史観 / 古城虎吉 / 古文家 / 古今 / 沈約 |
Research Abstract |
平成9年度の研究では以下の事柄が検証された。 1 明治期における中国文学史:日本で刊行された中国文学史をコンピューターに入力してデータベースを作成する作業を通して、中国文学史は1900年前後の日本で集中的に刊行されていることが明らかになったが、それは文学史という概念がまず西欧近代に発し、西欧の摂取に努めた日本に流入して、中国の文学に関しても通史を書き表そうという刺激が与えられたからであった。日本には中国の文化・学術の蓄積があったために、量的にも質的にも他の国々を圧倒し、中国ですら初期の文学史は日本の中国文学史をモデルにしている。明治期に書かれた中国文学史は近代の進歩的史観に基づいているために、従来は「過去への回帰」と受け取られてきた文学史上の変化を「新しい進歩」とみなすなど、近代の史観によって組み直されていることが明らかになった。 2 唐代の文学史的思考:近代に至って文学史という概念が成立する以前にも、早い時期から文学史的な思考は存在した。唐王朝は成立するやいなや史書を編纂し、先行する時代の文学を整理したが、そこには国家のイデオロギーが濃厚に漂い、儒家の文学理念もそのために援用されている。しかし同じ時期でも民家における六朝文学の把握は文学そのものを純粋に享受しているように見える。やがていわゆる古文家が起こり、儒家思想に基づいた文学観が打ち立てられ、そこから後代の文学史観が形成されていくが、その詳細な過程は今後の研究の課題である。 3 その他:以上のほかに、中国における史書の言述と小説的な言述との同質性と異質性、中国の文学史観における古今の対立など、様々な問題が新たに提起され、検討された。
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[Publications] 川合 康三: "唐代における文学史的思考(上)" 京都大学文学部研究紀要. 37. 1-44 (1998)
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[Publications] 和田 英信: "「古と今」の文学史" 日本中国学会報. 49. 234-248 (1997)
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[Publications] 西上 勝: "唐代小説における出会いをめぐって" 山形大学紀要(人文科学). 14-1. 111-131 (1998)