現代日本の都市土地法と「自治的」土地利用秩序形成の方向に関する総合的研究

1996 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 08302004
• Research Category: Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
• Section: 総合
• Research Institution: The University of Tokyo
• Principal Investigator: 原田 純孝 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (50013016)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 吉田 克己 北海道大学, 法学部, 教授 (20013021) ; 見上 崇洋 竜谷大学, 法学部, 教授 (50115755) ; 戒能 通厚 名古屋大学, 法学部, 教授 (00013011) ; 内田 勝一 早稲田大学, 法学部, 教授 (10063794) ; 五十嵐 敬喜 法政大学, 法学部, 教授 (90277690)
• Keywords: 都市土地法 / 都市計画法 / 自治的土地利用秩序 / 街づくり / 地方分権 / 住民参加 / 規制緩和 / 現代的土地所有権

Research Abstract

1.都市土地法の全体的構造の解明という課題については、規制緩和と地方分権の動きが法システムの構造と機能をどう変えようとしているか、またそれは、《良好な都市居住環境の形成・保全・整備》という観点からみた街づくりのあり方にいかなる影響を及ぼすか、の検討に一つの重点をおいた。その成果の一端が「研究発表」欄末尾の特集(6論文を所収)であり、(1)右の動きは「自己決定」と「自己責任」の強調にもかからわず、必ずしも「望ましい共同の都市空間」の形成・整備に向けた住民の制御権能を強化するものとなっていない、(2)都市計画権限の分権化(第1次勧告)の内容は--欧米諸国と対比すればとくに--なお限定されたのもである一方、(3)個々的な「分権・規制緩和」措置の内容が過度に開発促進へ方向づけられている、(4)都市の行財政へも余分の負担と歪みを生じさせる側面を伴っている、などの点を確認した。
2.「自治的」土地利用秩序形成への実体的動向に関しては、真鶴町「美の条例」の機能、流山市の「市民マスタープランづくり」運動、阪神大震災の復興過程と住民組織の役割などを中心に調査研究を進めた。ここでも、(1)分権、規制緩和の動きがそうした自治体や市民レベルの動向を下支えするには不十分なこと、(2)その改善のためには、欧米での住民参加による街づくりの諸事例をも参考にしつつ、分権の論理と法律-条例の関係、都市計画とその法的拘束力を基礎づける「公共」の論理と「参加」・「自治」の意義、手続や法規範内容へのその反映の仕方などを、統一的な観点から理論的に見直す必要があることを確認した。
3.歴史を踏まえた比較総合的なアプローチの視点の吟味に関しては、今年度は住宅政策との関係の促え方に力点をおいた。その成果の一端は、各研究分担社の研究業績の中に反映されている。

Research Products

• [Publications] 五十嵐 敬喜: "土地基本法-その前後" 法社会学. 48号. 54-60 (1996)
• [Publications] 五十嵐 敬喜: "阪神大震災と新しい立法" 都市計画. No.200No.201. 121-129 (1996)
• [Publications] 五十嵐 敬喜: "環境影響評価制度と参加-公共事業との接点を求めて" 法律のひろば. Vol.49No.12. 11-17 (1996)
• [Publications] 五十嵐 敬喜: "都市計画とまちづくり" 並河編『分権社会の創造-国家主義打破へのシナリオ』. 東洋経済新報社. 31-58 (1996)
• [Publications] 五十嵐 敬喜: "権力と土地・住宅政策" 早川・横田編『講座 現代住宅4 居住と法・政治・経済』. 東京大学出版会. 31-63 (1996)
• [Publications] 大村 健二郎: "市街化調整区域における開発規則の実態と整備課題" 都市住宅学. 15号. 72-77 (1996)
• [Publications] 荒木俊輔・大村健二郎: "中心性を持つ独立した地方中心都市に関する調査" 都市住宅学. 15号. 48-53 (1996)
• [Publications] 戒能 通厚: "住宅基本法の法概念" 大本・戒能編『講座 現代居住1 歴史と思想』. 東京大学出版会. 37-60 (1996)
• [Publications] 戒能 通厚: "アジアの現代と法" 法律時報. 68巻8号. 9-16 (1996)
• [Publications] 角松 生史: "土地収用法手続における『公益』の観念-1874年プロイセン土地収用法を素材として" 社会科学研究. 48巻3号. 147-203 (1996)
• [Publications] 川瀬 光義: "On the Revolution of the Fixed Assets Tax in FY 1994 in Japan" LAND ECONOMICS ANNUAL PUBLICATION. May. 23-31 (1996)
• [Publications] 原田 純孝: "フランスの都市計画制度と地方分権化の現況" 日本都市センター編『欧米のまちづくり制度-地方分権の視点から』. 日本都市センター. 85-121 (1996)
• [Publications] 原田 純孝: "都市の土地所有(権)と法社会学" 法社会学. 48号. 42-53 (1996)
• [Publications] ヴァンサン・ルナ-ル(原田純孝・寺尾 仁訳): "土地バブルと都市政策-ヨーロッパの文脈のなかでのフランス" 季刊 不動産研究. 38巻4号. 1-11 (1996)
• [Publications] 見上 崇洋: "都計法三二条の同意と処分性" 民商法雑誌. 114巻2号. 291-303 (1996)
• [Publications] 三木義一・中島茂樹: "所有権の保障と課税権の限界" 法律時報. 68巻9号. 47-55 (1996)
• [Publications] 戒能 通厚: "規制緩和・分権化の「構造的文脈」と都市法の論理" 法律時報. 4月号. (1997)
• [Publications] 五十嵐 敬喜: "「自治事務」と真鶴町街づくり条例" 法律時報. 4月号. (1997)
• [Publications] 見上 崇洋: "行政の構造変化と都市行政法学の課題" 法律時報. 4月号. (1997)
• [Publications] 川瀬 光義: "地方分権と都市財政" 法律時報. 4月号. (1997)
• [Publications] 原田 純孝: "農業・農地からみた規制緩和と地方分権" 法律時報. 4月号.
• [Publications] 五十嵐 敬喜 他: "美の条例 いきづく町をつくる真鶴町一万人の選択" 学芸出版社, 285 (1996)
• [Publications] 見上 崇洋: "行政計画の法的統制" 信山社, (1996)
• [Publications] 吉田 克己: "フランス住宅法の形成" 東京大学出版会, 442 (1997)
• [Publications] 川瀬 光義: "台湾・韓国の地方財政" 日本経済評論社, (1996)