Research Abstract |
炭酸塩一珪酸塩混合相堆積物に及ぼす続成作用の種々の要因について,昨年に引き続き最終氷期以降に形成された鹿児島県喜界島に発達する完新統新期砂丘層に加え,沖縄県久米島北西部に発達する完新統砂丘砂層(通称大原砂丘)について検討した. 沖縄県久米島大原砂丘は,北西部の空港南端から仲泊にかけての幅300m,長さ約3kmにわたって,離水サンゴ礁である西銘崎石灰岩を不整合に覆って分布する.現在,大原のシンリ浜には,この砂丘砂層の断面が露出しており,地表面より下位に向け,明褐色未固結泥質砂丘砂層(A帯),淡黄色未固結砂丘砂層(B帯),半固結砂丘砂層(C帯),層理の発達する板状固結砂丘砂層(D帯)が観察される.X線回折装置(既存)を用いての炭酸塩鉱物組成分析では,A帯・B帯の炭酸塩鉱物組成は,低Mg方解石=20%弱,高Mg方解石=55〜60%,アラレ石=20〜25%であり,ほぼ現世炭酸塩堆積物の鉱物組成に等しいのに対し,C帯・D帯では,低Mg方解石=45〜50%,高Mg方解石=35〜40%,アラレ石=15%で相対的に低Mg方解石に富んでいる.砂丘砂層中では初生堆積物に大きな相違が観察されないことから,このような層状の分帯構造は続成作用の違いに起因するものと考えられ,通気帯中の続成分帯に対応すると推定される.A帯は主として不安定鉱物の溶解が卓越する溶解帯,C帯・D帯は,A帯での溶解により地下水中に供給された炭酸カルシウムが,地下水中での過飽和の進行により粒子接触部で沈澱が起きている沈澱帯とみることができる. さらに昨年度科研費により導入した安定同位体質量分析装置による炭素・酸素同位体組成分析では,C帯・D帯の沈殿帯において炭素,酸素同位体組成が軽くなるだけでなく,ほぼ現世浅海成炭酸塩堆積物の鉱物組成を示すA帯・B帯においても,僅かではあるが炭素,酸素が軽くなる傾向が認められた.これらの結果は,地表露出に伴い,淡水性続成作用により鉱物組成・同位体組成が変化したことを示すだけでなく,鉱物組成変化に先立ち,同位体組成が変化する可能性があること示唆するものと考えられる.本砂丘砂層下位の西銘崎石灰岩の堆積年代は,14C年代により4,960〜.5,740y.B.Pとされており,また砂丘砂層上の北原貝塚の年代が1,640〜1,890y.B.P.であることから,砂丘砂層はこの間に形成され,少なくとも約5,000年以内で上記の続成作用は進行し,分帯構造は形成されたものと考えられる. 日本沖の北西太平洋で,浮遊性有孔虫群集から古環境に関する情報を含む多数の有意な因子を得る目的で因子分析を行い,地理的分布が水塊分布の関連する5つの因子が得られた.第一因子は黒潮,第二因子は変遷水,第三因子は親潮,第四因子は黒潮縁辺流,第五因子は沿岸流で,これらの5因子ですべての変数の94%を説明することができる.更に,個々の環境要素の数値を算出するために重回帰分析を行い,黒潮・親潮海域の独自の変換関数を確立した.本研究で得られた変換関数PFJ-125の標準誤差は,冬の表層水温でおよそ1.75℃,夏の表層水温でおよそ1.17℃,高い信頼度の変換関数が確立された.
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