1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08404052
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
高畑 尚之 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 教授 (30124217)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宝来 聰 国立遺伝学研究所, 遺伝学専攻, 助教授 (40126157)
颯田 葉子 総合研究大学院大学, 教育研究交流センター, 助教授 (20222010)
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Keywords | 人類進化 / MHC / ミトコンドリアDNA / 生物個別性 / 遺伝的多様性 / 霊長類学 / 集団生物学 / 遺伝的未来 |
Research Abstract |
人類集団が保有する遺伝的多様性および近縁霊長類との遺伝的差異を明らかにする目的で、現在でき得る最大のDNA塩基配列データベースの構築を行った。このデータベースは、自然選択に関して中立な遺伝子群と免疫系関連の明らかに自然選択の作用を受けた遺伝子群から成る。これらを、分子進化学及び集団遺伝学観点から解析し、次のことを明らかにした。(1)霊長類内の比較では分子時計が存在し、従ってDNA塩基配列の相違から霊長類の分岐年代を推定できること。(2)論争中の新世界猿や旧世界猿の分岐は、従来の説よりも相当古いこと。(3)新世界猿と分岐して以来5000万年に及びヒト集団の歴史を探る方法を提案し、祖先集団の個体数の推定を行った結果、大集団であったこと。(4)人類の祖先がアフリカから世界へ拡散しはじめた以降、個体数に大きな減少があったこと。こうした成果はオリジナル論文の他に、ゴ-ドン会議(ベンツーラ1月25日〜31日)や国際シンポジウム(マドリッド2月23日24日)で発表した。 現代人の起源と拡散に関しては、これまでのミトコンドリアDNAの解析成果を取りまとめ、岩波科学ライブラリーから出版した。また、モンゴロイドの拡散や日本人の起源を探るため、広範囲のサンプリングを行い、ミトコンドリアDNAの塩基配列を決定中である。 免疫系の主要な遺伝子座の多様性創出機構及びこれらの遺伝子の起源に関する研究を行った。その結果、多様性創出にはエキソンの一部が遺伝子変換を受けていることが確からしくなり、自然選択と共にその異常性の原因であるとの結論を得た。また、免疫系の起源は古くカンブリア紀にさかのぼるといわれていたが、それは当時起きたと思われる大規模な遺伝子重複の結果であるとの知見を得た。この推測が正しければ、シンテニ-を利用した免疫系の元祖遺伝子の同定が可能であり、このことは、我々の生体防御系の理解に役立つと期待している。 最後にヒトの顕著な個別性と人類の未来に関する試論を発表した。調和のとれた未来を期するための考察である。
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[Publications] Naoyuki Takahata: "Evolution of the Primate lineage leading to modern human:Phylogenetic and demographic inferences from DNA sequences" Proc.Natl.Acad.Sci.USA. Vol.94. 4811-4815 (1997)
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[Publications] Masanori Kasahara: "Chromosomal duplication and the emergence of the adaptire immune system" Trends in Genetics. Vol.13-No.3. 90-92 (1997)
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[Publications] Blazenka Grahovac: "Polymorphism of the HLA class II loci in Siberian populations" Human Genetics. 102. 27-43 (1998)
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[Publications] Naoyuki Takahata: "Improbable truth in human MHC diversity?(News & Views)" Nature Genetics. 18. 204-206 (1998)
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[Publications] Vladimir Vincek: "How large was the founding population of Darwin´s finches?" Proc.R.Soc.Lond.B. 264. 111-118 (1997)
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[Publications] 高畑 尚之: "生命体の科学-個別性と多様性の観点から-" 日本物理学会誌. 52・7. 493-500 (1997)
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[Publications] 宝来 聰: "DNA人類進化学" 岩波書店(岩波科学ライブラリー52), 120 (1997)
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[Publications] Takahata N.: "Multiregional or uniregional origin of modern humans:What do genetic data indicate?" World Scientofic Publishing Company PTELTD,Singapore, (1998)