1997 Fiscal Year Annual Research Report
マキシマム・エントロピー法によるフラーレン化合物の精密構造解析
Project/Area Number |
08405003
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
坂田 誠 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (40135306)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高田 昌樹 島根大学, 総合理工学部, 助教授 (60197100)
篠原 久典 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (50132725)
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Keywords | 金属内包フラーレン / Y@C_<82> / Sc_2@C_<84> / マキシマムエントロビ-法 / フラーレン / 粉末回折 / 構造解析 / 放射光 |
Research Abstract |
今年度は、金属内包フラーレンの精密構造解析としては、Sc@C_<82>の構造研究を行った。まず、HPLC法により1ミリグラム程度のSc@C_<82>を単離した。Sc@C_<82>には幾つかの構造異性体があるが、今回解析したのは、構造異性体1と呼ばれる試料である。Sc@C_<82>では、NMRの測定が出来ないために、フラーレン・ケージの対称性も明らかにされていなかった。試料を単離した後、放射光粉末回折実験により、微量試料ながら統計性の高い良質なX線粉末回折データを測定した。測定したデータを、本研究により開発されたマキシマムエントロピー法とリ-トヴェルト法を組み合わせた新たな方法により解析し、最終的に、Sc@C_<82>の精密構造解析に成功した。この結果、Scを内包しているC_<82>フラーレン・ケージはフラーレン・ケージ単体では不安定な、C_<2V>の対称性を持つことが明らかになった。Scを内包することにより、本来不安定なC_<2V>フラーレン・ケージが安定化している。このことは、金属内包フラーレンの安定構造を考える上で大きな示唆を与えている。Sc@C_<82>と昨年解析したSc@C_<84>の結果を比較すると、内包金属の存在形態に著しい特徴的差異があることが見いだされた。原子1個をフラーレン・ケージに内包したSc@C_<82>では、Scがフラーレン・ケージと共に回転運動をしているのに対してSc@C_<84>では、Sc同士が伸縮運動をしている。それにより、C_<84>フラーレン・ケージも室温でほとんど回転を止めていることが分かった。その他、アルカリ・ドープ・フラーレンについても、解析を行った。
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[Publications] M.Takata 他: "Structure of Endohedral Dimetallofullerene Sc_2@C_<84>" Physical Review Letters. VOL78,. 3330-3333 (1997)
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[Publications] M.Takata 他: "X-Ray Structural Study of Di-metallofullerene Sc_2@C_<84>,by Maximum Entropy Method" Proceedings of 191 st Meeting of The Electrochemical Society,Inc. Montoreaal,Canada,May. 4-9 (1997)
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[Publications] M.Sakata 他: "Charge Density of Hexagonal Boron Nitride Using Synchrotron Radiation Powder Data by Maximum Entropy." J.Phys.Chem Solids. Vol.58,. 177-183 (1997)
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[Publications] H.Sasaki 他: "Structural Studies on the Phase Transition of La_3Ni_2O_<6.92>" Reprinted from Journal of the Physical Society of Japan. Vol.66,6. 1693-1697 (1997)
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[Publications] H.Shinohara 他: "Metallofullerene; Their Formation and Characterization" Materials Science Forum,. Vol.232. 207-232 (1996)
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[Publications] 高田 昌樹 他: "メタロフラーレンY@C_<82>" 日本結晶学会誌. 38. 224-248 (1996)