1997 Fiscal Year Annual Research Report
光異性化反応による液晶の分子配向制御と光応答性に関する研究
Project/Area Number |
08405008
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
八田 有尹 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (70005502)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 裕史 東北大学, 大学院・工学研究科, 講師 (50236022)
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Keywords | 液晶 / 光異性化 / 分子配向 / 表面 / 赤外分光 / 配向制御 / 振動スペクトル |
Research Abstract |
本研究は、固体表面に光異性化分子を結合させる方法を開発し、光異性化分子と接触する液晶の分子配向を光によって制御できることを分光学的に実証するとともに、光異性化分子-液晶分子間相互作用を明らかにすることを目指している。平成9年度においては、銀や金の表面において単分子層を形成する光異性化分子としてアゾベンゼンのチオール誘導体の一つ(以下SH系と略す)を選び以下の測定を行った。 SH系分子のクロロホルム溶液に紫外線(325nm)を照射し、紫外・可視吸収スペクトルを測定した。紫外線照射によりπ-π^*遷移によるバンドの強度が減少し、n-π^*遷移によるバンド強度が増加したことから、SH系分子のトランス体からシス体への異性化が確認できた。そこで、SH系のクロロホルム溶液に島状銀蒸着膜を浸積した後、大気に取り出し赤外透過スペクトルを測定した。このスペクトルにはSH系粉末試料で確認されたS-H伸縮振動バンドは観測されず、SH系分子はその水素を解離して銀表面に吸着することが示唆された。この吸着SH系分子層をシアノビフェニル系ネマチック液晶(K15)で被覆した試料について赤外高感度反射スペクトルを測定したところ、液晶分子がランダムに配向する等方性温度ではCN基の伸縮振動バンドの強度が減少し、液晶温度では増加することがわかった。この結果より吸着SH系分子との相互作用により液晶分子が基板に対して垂直に配向することが示された。さらに、この試料の紫外線を照射したところCN基の伸縮振動バンドの強度は減少し、続いて可視光を照射すると増加した。これらの変化は吸着SH系分子のトランス体→シス体→トランス体への移行に伴う液晶分子の配向状態の変化に対応すると考えられる。以上のように、表面第一層の光異性化による液晶の配向変化が確認できたが、今後は光照射条件をさらに検討し異性化効率の向上を図る予定である。
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