1996 Fiscal Year Annual Research Report
発育解剖学的差異をもつ作物根系構成要素の機能特異性の解明
Project/Area Number |
08406002
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
河野 恭廣 名古屋大学, 農学部, 教授 (90023407)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢野 勝也 名古屋大学, 農学部, 助手 (00283424)
飯嶋 盛雄 名古屋大学, 農学部, 助手 (60252277)
山内 章 名古屋大学, 農学部, 助教授 (30230303)
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Keywords | 作物 / 根系 / 側根 / 浸透圧調節 / 水吸収 / 粘液分泌 / 伸長速度 / 日周変動 |
Research Abstract |
作物根系は形態的・生理機能的に異なる根によって構成されていると考えられているが、その差異の実態についてはほとんど解明されておらず、研究や栽培現場で混乱を生み出す原因となっている。本研究では、イネ科・マメ科作物数種を対象に、各根系構成要素の機能特異性を以下の一連の実験により検討した。 1.申請した暗視野植物根観察システムによって、まず今年度は、根圏に放出される根冠粘液の分泌動態と種子根の伸長リズムの解析を行った。根冠粘液の分泌には、明け方から午前中にかけて減少した後、午後増加するという日周変動パターンがあることを明らかにした。さらに、種子根の時間当たり伸長速度の変動をパワースペクトル解析したところ、種子根の伸長には約21時間のサーカディアン周期と約5時間のウルトラディアン周期が存在することを示唆した。2.根系構成要素間の水吸収特性を、定量的に解析した。申請したプラントトームとクライオスタットを用いて、蛍光色素(Rhodamine B)を取り込ませた根の新鮮切片を調整し、蛍光色素の体内分布を定量した。その結果、一個体の根系を構成する根を主軸根とそこから発生する側根に分けて考えると、側根が基本的に水吸収機能を担っていることを明らかにした。3.土壌乾燥ストレス下での根における浸透圧調節機構を把握するため、様々なカチオンの根系構成要素レベルでの分布を、申請した原子吸光光度計により測定した。その結果、乾燥ストレスの強度によって、根の伸長・成熟部位におけるカリウムをはじめとする各種溶質の反応に特異性があることを示唆した。さらに、浸透圧調整機能の大きさは、根系構成要素の違いにより異なることを明らかにした。 次年度は、本年度の結果をふまえて、さらに根系構成要素の機能特異性を詳細に検討する予定である。
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[Publications] Izumi,Y.et al.: "Timecourse changes in two different topological indices with seminal root system development of rice." Japanese Journal of Crop Science. 65・2. 303-308 (1996)
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[Publications] Kwak,K.S.et al.: "Changes with aging in the activities of succinic dehydrogenase and peroxidase in rice seminal root system." Japanese Journal of Crop Science. 65・2. 309-314 (1996)
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[Publications] Kwak,K.S.et al.: "Changes with aging of endogenous abscisic acid and zeatin riboside in the root system of rice." Japanese Journal of Crop Science. 65・4. 686-692 (1996)
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[Publications] Mia,M.W.et.al.: "Root system structure of six food legume species : Inter-and intraspecific variations." Japanese Journal of Crop Science. 65・1. 131-140 (1996)
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[Publications] Mia,M.W.et.al.: "Plasticity in taproot elongation growth of several food legume species." Japanese Journal of Crop Science. 65・2. 368-378 (1996)
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[Publications] Yano,K.et al.: "Distribution of arbuscular mycorrhizas in peanut root system." Japanese Journal of Crop Science. 65・2. 315-323 (1996)
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[Publications] Yano,K.et al.: "Modification of root system morphology in a peanut seedling inoculated with arbuscular mycorrhizal fungus,Gigaspora margarita Becker & Hall." Japanese Journal of Crop Science. 65・2. 361-367 (1996)
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[Publications] Yano,K.et al.: "Localized alteration in lateral root development in roots colonized by an arbuscular mycorrhizal fungus." Mycorrhiza. 6・5. 409-415 (1996)
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[Publications] 飯嶋盛雄: "根の命名法の統一と最少調査項目に関する最近の動向." 農業および園芸. 71・11. 1233-1238 (1996)
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[Publications] 泉泰弘: "作物根系の表現型可塑性." 根の研究. 5・1. 38-42 (1996)
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[Publications] 小川敦史・山内章: "浸透圧調整とその根における働き." 根の研究. 5・1. 18-22 (1996)
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[Publications] 河野恭廣・山内章: "植物根系の理想型.(山内章編)" 博友社, 172 (1996)