骨軟部腫瘍の診断、組織発生及び治療効果に関する病理学的及び分子病理学的研究

1998 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 08407008
• Research Institution: The University of Tokyo
• Principal Investigator: 町並 陸生 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (30010052)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 元井 亨 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (50291315) ; 宇於崎 宏 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (10296246) ; 鹿島 健司 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (70292729) ; 石田 剛 東京大学, 医学部・附属病院, 講師 (40223002)
• Keywords: 骨肉腫 / p53遺伝子 / Rb遺伝子 / LOH / 化学療法感受性 / 滑膜肉腫 / HGF / c-Met / Neurofibromatosis 2

Research Abstract

骨肉腫の術前化学療法感受性とp53及びRb遺伝子の変異との関係を明らかにするために、32例の通常型骨肉腫の治療効果を病理組織学的に判定し、p53及びRb遺伝子の相同性の欠失(LOH)をPCR法を用いて調べた。p53のLOHは24例中13例(54%)、RbのLOHは24例中14例(58%)に認められた。p53LOH陽性例の15%しか化学療法感受性を示さなかったが、LOH陰性例では64%が化学療法感受性を示した。一方、RbLOH陽性例の14%しか化学療法感受性を示さなかったのに反し、RbLOH陰性例では55%が感受性を示した。
滑膜肉腫12例について肝細胞増殖因子(HGF)とその受容体であるc-Metを免疫組織化学的に検索した。HGFとc-Metの両方が5例の2相性の滑膜肉腫の上皮成分に陽性となり、単相性線維性滑膜肉腫3例で上皮様細胞巣がc-Metのみ陽性となった。HGF/c-Met系が2相性滑膜肉腫の腺管形成に密接に関与しているのではないかと考えられる。
Plexiform schwannoma(PS)とneurofibromatosis 2(NF-2)と呼ばれている病変との関係を明らかにするために、NF-2又は髄膜腫に合併したPS6例を病理組織学的に検索した。4例のPSはNF-2の患者にみられ、いずれも多発性であった。このうち2例には髄膜腫も認められた。一方、他の2例のPSは髄膜腫のみで、NF-2はみられなかった。PSがNF-2或いは髄膜腫に合併することを知っておくことは重要である。これらの結果は、論文として発表した。
その他、軟骨肉腫との鑑別が問題となる軟骨腫、肉腫との鑑別が問題となるdecubital fibroplasia、胎児型横紋筋肉腫にみられた粗面小胞体内の微小管の集簇、平滑筋への分化を示す巨大大網腫瘍の症例報告、骨肉腫におけるOB-カドヘリン蛋白の発現、骨線維性異形成とアダマンチノーマの関係、粘液型脂肪肉腫の病理診断における分子生物学的手法の応用、色素性軟部腫瘍におけるc-met protooncogene産物の発現、ヒト消化管間質腫瘍の免疫組織化学、などについての報告も行った。

Research Products

• [Publications] Goto A, Machinami R et al.: "Association of loss of feterozygosity at the p53 locus with chemoresistance in osteosarcomas" Jpn J Cancer Res. 89. 539-547 (1998)
• [Publications] Motoi T, Machinami R et al.: "Coexpression of hepatocyte growth factor and c-Met protooncogene product in synovial sarcoma" Pathology International. 48. 769-775 (1998)
• [Publications] Ishida T, Machinami R et al.: "Phenotypic diversity of neurofibromatosis 2 : association with plexiform schwannoma" Histopathology. 32. 264-270 (1998)
• [Publications] Ishida T, Machinami R et al.: "Concurrent enchondroma and periosteal chondroma of the humerus mimicking chondrosarcoma" Skeletal Radiology. 27. 337-340 (1998)
• [Publications] Yamamoto M, Machinami R et al.: "Atypical decubital fibroplasia in a young patient with melorheostosis" Pathology International. 48. 160-163 (1998)
• [Publications] 町並 陸生 他: "OFDとadamantinomaとの関係" 日整会誌. 72(6). 1075-1075 (1998)
• [Publications] 鹿島 健司, 町並 陸生 他: "骨肉腫におけるOB-カドヘリン蛋白の発現" 日整会誌. 72(6). 1137-1137 (1998)
• [Publications] 石田 剛, 町並 陸生 他: "粘液型脂肪肉腫の病理診断における分子生物学的手法の応用" 日整会誌. 72(6). 925-925 (1998)
• [Publications] 山本 基, 町並 陸生 他: "画像的に大腿骨頭骨皮質の消失を認めた軟骨芽細胞腫の3例" 日整会誌. 72(6). 969-969 (1998)
• [Publications] 蛭田 啓之, 町並 陸生 他: "病理からみた治療効果の判定" 日整会誌. 72(6). 1106-1106 (1998)
• [Publications] 小島 達自, 町並 陸生 他: "軟部悪性線維性組織球腫の組織像地図分析と臨床象" 日整会誌. 72(6). 987-987 (1998)
• [Publications] 元井 亮, 町並 陸生 他: "色素性軟部腫瘍におけるc-met proto-oncogene産物の発現" 日本病理学会会誌. 87. 358-358 (1998)
• [Publications] 土田 里香, 町並 陸生 他: "粗面小胞体内に微小管の集簇(microtubular aggregates)が認められた胎児型横紋筋肉腫の1例" 日本病理学会会誌. 87. 442-442 (1998)
• [Publications] 宇於崎 宏, 石田 剛 他: "低血糖症を合併した巨大大網腫瘍の一例" 日本病理学会会誌. 87. 440-440 (1998)
• [Publications] 山内 直子, 町並 陸生 他: "多嚢胞性腹膜中皮腫の1例" 日本病理学会会誌. 87. 477-477 (1998)
• [Publications] 高沢 豊, 町並 陸生 他: "ヒト消化管間質腫瘍の免疫組織化学的検討" 日本癌学会総会記事. 89. 622-622 (1998)