Research Abstract |
Transmembrane 4 superfamily(TM4SF)は現在のことろ約15種のクローニングがなされているが,癌に関連するものはMRP-1/CD9,ME491/CD63,KAI1/CD82である.MRP-1/CD9の解析では最も当研究室で分析が進んでいる肺癌症例151例を用い,RNAよりcDNAを合成し,quantitative RT-PCRを行った.その結果,ME491/CD63はメラノーマで報告されているような癌転移抑制遺伝子というよりは,むしろhouse keeping gene的な存在で,ほぼ全例で発現量は不変であった.一方,MRP-1/CD9は38.5%,KAI1/CD82は76.8%でその発現量が減少していた.特にKAI1/CD82は1期で66.2%,3期で86.7%と早期から減少することが明らかになった.そこで,肺癌の悪性度との関連で癌抑制遺伝子であるp53のmutation及び癌関連遺伝子であるK-rasのmutationを,PCR-SS CP法及びdirect sequencingにて検討した.p53は肺癌全体の35.4%でmutationをきたしていたが,K-rasでは8.3%でmutationがみられるのみにすぎなかった.K-rasは肺癌では発癌から転移に関する過程において,消化器癌などとは異なり,あまり重要な役割を占めていないということが示唆された.また,同じTM4SFでもKAI1/CD82とMRP-1/CD9の発現異常は,時期的にかなり異なっており,肺癌では早期からKAI1/CD82の発現異常が発生し,ついでp53の異常が始まり,最終的にMRP-1/CD9の発現異常に伴う転移能の獲得という,癌のprogressionの過程が示唆された.また,これらの作用機構について,最近integrin familyとの結合に伴う機序が注目されてきているが,肺癌手術症例を用いてα1,α2,α3,α4,α5,α6,β1の発現量との相関を検討したが,全く相関関係はみられなかった.これは一つには肺癌ではすでにこのような正常に近い状態が喪失しており,癌の悪性度が増しているのかもしれない.
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