Research Abstract |
Transmembrane 4 superfamily(TM4SF)の中でMRP-1/CD9,KAI1/CD82,ME491/CD63,が癌の転移に関連していることが判明してきているが,昨年われわれが検討した癌でも肺癌,乳癌,膵臓癌においては,前二者は病期が進行するにつれて発現が減少してくることが判明した.しかし,ME491/CD63は進行癌においても保持され,メラノーマ以外ではハウスキーピングジーンであると考えられた.また,これら三者は早期癌や高分化癌において,VLAファミリーや他のTM4SFに属しているCD53やCD81とmulticomponentな複合体を形成しており,初期の段階でKAI1/CD82が減少し始め,ついでMRP-1/CD9が減少してくる.こうして,まず転移能を持った癌細胞が出現してくると考えられる.しかしながら,ME491/CD63は,転移後もその複合体構成からはずれることはない.そして,この複合体の構成物質の中でもインテグリンb1が最後までその構成能力を保持している.その結果,KAI1/CD82やMRP1/CD9がこれらの癌において予後因子となると考えられた.このシグナル伝達の上位遺伝子としてP53やRB遺伝子が考えられたが,これらの欠損株に正常遺伝子をトランスフェクションしてみたが,TM4SFの発現量に変化は様々で大半の細胞において変化は認められなかった.また,臨床材料を用いて,これらの変異とKAI1/CD82,MRP1/CD9の発現量との関係を検討したが,やはり,一定のシグナリングを肯定するような結果は,得られなかった.現在,これらのプロモータのクローニングに努めており,プロモータのメチレーション以外に,プロモータ異常を起こす過程を検討中である.また,治療への応用として,ME491/CD63が構成要素として,最終段階まで保持されることから抗ME491/CD63抗体にMRP1/CD9 DNA,KAI1/CD82 DNAを接着させたイムノジーンを合成して,これによる遺伝子療法を現在in vitroで施行中である.
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