1997 Fiscal Year Annual Research Report
アンチセンスオリゴヌクレオチド血管内投与による悪性胸腫瘍遺伝子治療の試み
Project/Area Number |
08407043
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
福井 仁士 九州大学, 医学部, 教授 (10038713)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲村 孝紀 九州大学, 医学部, 助手 (50274460)
池崎 清信 九州大学, 医学部, 講師 (10145360)
西尾 俊嗣 九州大学, 医学部, 講師 (10180580)
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Keywords | BBB / antisense / brain tumor / Treatment |
Research Abstract |
アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた遺伝子療法の欠点は、アンチセンスオリゴが高分子であるため血管内投与では血管内にとどまるため、組織内到達率が低いことである。今回我々はラット脳腫瘍モデルにおいて、ブラディキニンの内頚動脈内投与による腫瘍組織内選択的血管透過性亢進が、血管内投与されたアンチセンスオリゴの腫瘍内到達率を向上させることに応用できるかを検討した。[材料と方法]RG2 rat glioma cell lineをラット脳内に移植し、ラット脳腫瘍モデルを作成した。血管内投与するアンチセンスオリゴはラット生体内に存在しない20塩基配列を合成した。ラットの内頚動脈をカテーテルで確保し、ここからブラディキニン(10μg/kg/min)を投与し、アンチセンスオリゴを同時に投与した。対照群ではブラディキニンの代わりに生理食塩水を投与した。15分後にラット脳を取り出し、腫瘍組織、正常脳を採取し、DNAを抽出した。抽出したDNAをメンブレン上に固定し、アンチセンスオリゴに相補的なオリゴを用いて定量した。[結果]アンチセンスオリゴの組織内到達率は組織より定量したアンチセンスオリゴの量を組織の重さで除し、さらに血漿中のアンチセンスオリゴの濃度で除した値で評価した。ブラディキニン投与群では対照群に比べ、腫瘍組織内到達率は2.7倍であった。正常脳の部分では両群間に差はなかった。血管内投与されたアンチセンスオリゴは肝臓、腎臓に迅速に取り込まれるが、両群間で肝臓、腎臓内へのアンチセンスオリゴの取込に差はなかった。[考察]脳腫瘍の遺伝子療法は、その担体が高分子であるため血管内投与では組織内到達率が悪く、局所投与が行われているのが現状である。我々は、ブラディキニンによる腫瘍組織内選択的血管透過性亢進が低分子の物質(化学療法剤)だけでなく、高分子にも有効であることを示してきた。今回の結果より、この選択的血管透過性亢進法がアンチセンスオリゴヌクレオチドの腫瘍組織内到達率を向上させることにも有効であることが判明した。この方法によって、特定の遺伝子の発現を抑制するアンチセンスオリゴを血管内より脳腫瘍組織内に到達させることができると思われる。
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