1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08407047
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
五嶋 孝博 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (20272544)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
税田 和夫 自治医科大学, 附属病院, 講師 (20241995)
中村 耕三 東京大学, 医学部・附属病院, 助教授 (60126133)
黒川 高秀 東京大学, 医学部・附属病院, 教授 (90010298)
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Keywords | 脊髄 / 中枢神経 / 神経解剖学 / 神経生理学 / ネコ / 可塑性 / 脊髄損傷 / 脊髄症 |
Research Abstract |
脊髄急性圧迫および慢性漸増圧迫の動物モデルをネコを用いて作成し、脊髄病変と運動異常を解析した。第4頚椎に金属螺子を前方から刺入し、圧迫1分以内に螺子を緩めることにより脊髄を急性圧迫したネコは、約10日間立位不能、その後、可能となった。体幹の姿勢保持と前肢の目標到達が障害され、手と指の随意運動はほとんど障害されなかった。背筋に著明な筋萎縮が見られた。ネコの前方の筒の中の餌を前肢で取らせる課題運動と、ネコのを後肢のみで起立させる課題運動を行わせ運動を解析したところ、運動障害が認められた。この運動障害は約1か月で回復したが、背筋の萎縮は持続した。これらの症状から脊髄前索の障害が推定された。外側前庭神経核及び内側縦束を電気刺激し、前索の活動電位を記録した。圧迫部の吻側で記録された大きな陰性の活動電位は、圧迫部位では大きな陽性電位に変わり、伝導速度は著明に低下した。尾側ではこれらの電位はほぼ消失し、伝導ブロックの所見を示した。組織学的には、圧迫部の前索の線維が消失しグリア成癜痕で置き換わっていた。また尾側では、髄鞘の膨化・空胞化を認め、上記の運動障害及び電気生理学的検索の結果を裏付けた。 また、第46頚椎に前方から金属螺子を刺入し、2-4週毎に0.25mmずつ進めて、1年以上に渡って脊柱管前後径で50-60%脊髄を慢性圧迫した。慢性圧迫ネコの腰髄後索を刺激すると、頚椎圧迫部の背側表面に高振幅の異常電位が記録された。脊髄内記録により、この異常電位は後索の浅部に限局して発現することが判明した。更に、通常では記録されない大振幅の単一線維活動電位が後索から記録された。組織学的には、圧迫部の後索に髄鞘の膨化・空胞化が散在して認められ、髄鞘の崩壊により局所の電流密度が異常に大きくなり、上記の異常電位が発現したと考えられた。
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[Publications] 星野雄一, 五嶋孝博 他: "脊髄の慢性圧迫部にみられる高振幅誘発電位の発現機序" 脊髄電気診断学. 18. 135-138 (1996)
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[Publications] 星野雄一, 五嶋孝博 他: "メカニカルストレスと脊髄-超慢性圧迫下の脊髄-" 運動療法と理学療法. 8. 182-182 (1997)
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[Publications] 五嶋孝博, 他: "頚損ネコにおける脊髄障害と運動異常の解析" 脊髄電気診断学. 19. 13-16 (1997)