1997 Fiscal Year Annual Research Report
神経切断後の運動及び知覚神経の再生メカニズムの解明とその制御
Project/Area Number |
08407050
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Research Institution | Shimane Medical University |
Principal Investigator |
越智 光夫 島根医科大学, 医学部, 教授 (70177244)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朱 尚孝 島根医科大学, 医学部, 助手 (40206256)
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Keywords | 神経再生 / 脊髄前角細胞体 / 後根神経節細胞体 / Growth-associated protein |
Research Abstract |
平成7・8年度に行った実験では、ラットの坐骨神経を切断し、神経細胞体(知覚神経では後根神経節、運動神経では脊髄前角解剖)でのGrowth-associated protein(GAP-43)の発現を調べたところ、切断高位に関わらず、後根神経節の方が、脊髄前角細胞に比べ、GAP-43の発現が早いことを確認した。また、坐骨神経の切断部位が、より近位であるほど、より早期にGAP-43の発現が起こることがわかった。これらのことから、末梢神経損傷後の修復の準備は、神経細胞体が損傷部位により近い知覚神経において、運動神経より早期に生じる事が明らかになった。 本年度は、さらにラット坐骨神経を切断後神経縫合を行い、知覚神経、運動神経どちらがより早期に縫合部位を通過するか実験を行った。 ラット坐骨神経を大腿中央部で切断後縫合し、術後5、7、14日後にpinch testにて再生軸索の先端を確認し、その先端部で再切断を行い、近位断端を再生軸索に選択的に取り込まれ、神経細胞体まで運ばれるトレーサーであるFluoro-Gold溶液に浸した。その後、後根神経節、脊髄前角を採取して、蛍光顕微鏡でFluoro-Gold陽性細胞の発現を検索した。 その結果、何れの時期においても後根神経節の方が脊髄前角よりもFluoro-Gold陽性細胞の頻度が有意に多く、Fluoro-Gold陽性の強度も強かった。以上の結果から、以前の実験で確かめられた神経修復の準備だけでなく、実際の修復に際しても知覚神経線維が運動神経線維に先駆けて縫合部を通過することが明らかとなった。本実験で確かめられた神経修復時の知覚神経の優位性は、遠位断端が再生軸索を引きつけるueurotropismと、misdirectionした軸索を遠位断端内で刈り取るneurotrophismと共に神経修復の機序を解明する上で極めて有用な情報である。今後さらなる検討を加えて研究を進めていきたい。
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