1998 Fiscal Year Annual Research Report
脳虚血及び虚血後低灌流における炎症細胞及び血管内皮細胞接着因子の役割
Project/Area Number |
08407051
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Research Institution | NIIGATA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
福田 悟 新潟大学, 医学部, 助教授 (30116751)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
多賀 紀一郎 新潟大学, 医学部附属病院, 講師 (00163329)
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Keywords | 接着分子 / 脳低酸素 / 再酸素化 / 麻酔薬 / イソフルレン / サイオペンタール / ケタミン / 低灌流 |
Research Abstract |
平成10年度は、吸入麻酔薬isoflurane(ISO)の再酸素化後の脳循環動態と接着分子発現に及ぼす影響を検討した。前年度のcranial window法は脳への侵襲が大きく炎症反応が亢進するため、接着分子発現に対する麻酔薬の影響を見るのは困難であった。そこで、非侵襲的な近赤外線分光モニターを用いて脳内酸素化動態を検討し、併せて白血球の接着分子発現との関係を検討した。ISO 0.5、1.0および1.5MAC下のラットで低酸素負荷(5%02 10分間)-再酸素化後の脳内HbO_2,Hb,tHb,Cytaa_3の変化および多核白血球CD62L,CD11bの発現の推移を検討した。低酸素負荷前、再酸素化直後、30分、60分、90分、120分後に大腿動脈より採血し、CD62LおよびCD11bをflow cytometryにて測定した。また、再酸素化120分にKClで心停止させた後に脳内の血液を洗い流し、酵素抗体法により脳血管内皮細胞に発現するICAM-1を測定した。低酸素負荷中、ISOの濃度に関係なくHbO_2は減少し、Hbは増加した。tHbは0.5MAC,1.0MAC群では増加し、1.5MAC群では減少した。Cytaa_3は変化しなかった。再酸素化後、0.5MAC群ではHbO_2およびtHbが有意に減少したが、1.0MAC群および1.5MAC群では有意な減少はなかった。Hbは変化しなかった。接着分子に関しては、0.5MACおよび1.OMAC群でCD11bは有意に増加したが1.5MAC群で増加しなかった。一方、CD62Lには有意な変化が見られなかった。再酸素化後0.5MACおよび1.OMAC下において、CD11bの平均蛍光強度または低酸素負荷前からの変化率(%)とHbO_2およびtHbとに有意な相関が見られたが、1.5MACでは全くその相関がみられなかった。脳血管内皮細胞に発現するICAM-1は低酸素負荷中はその発現が見られないのに対して、低酸素負荷後120分で明らかにICAM-1の発現がみられた。また、低酸素負荷をおこなわない場合には、ICAM-1の発現は明らかに少なかった。しかし、ICAM-1の発現を定量化するのは困難であり、ISOの影響を検討できなかった。本研究から、高濃度ISOには低酸素負荷に対して接着分子を介する炎症反応を抑制して脳保護作用を呈することが示唆された。
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