1997 Fiscal Year Annual Research Report
リポソーム中での細胞骨格形成による運動性モデル細胞の構築
Project/Area Number |
08408029
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宝谷 紘一 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80025444)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 知彦 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 講師 (30183742)
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Keywords | 細胞骨格 / リポソーム / 微小管 / アクチン / モデル細胞 / 暗視野顕微鏡 |
Research Abstract |
細胞活動の分子機構や細胞運動のメカニズムを探るための手段として、リポソーム内部に細胞骨格ネットワークを再構築させて、運動性のモデル細胞を創製することを目的とする。本年は、リポソームへの生体超分子構造封入手段の開発を試みた。 <リポソームを穿孔するタンパク質、タリン> 細胞モデルを構築する際、リポソームに様々な生体分子を封入する技術の確立が肝要である。リポソームの形成時にタンパク質を封入する方法については既に開発した。しかし、一旦形成されたリポソームに新たに超分子を挿入する方法は未だ確立していない。ところが、生体膜と細胞骨格を結合させるために働いていると考えられているタンパク質タリンが、リポソーム膜を穿孔し脂質二重層膜の開放端を形成して、その穴を安定化する能力を持つことが分かった。タリン濃度の上昇に従って、はじめ球型のリポソムに一つの大きな穴が開いてカップ型となり、しだいに開口部が拡がってゆき、最終的にシートに変形することが映像記録により明らかになった。また、タリンによってカップ型やシート状に変形したリポソームに対して、徐々にタリン濃度を下げていったところ、シートは次第にカップ型となり、カップの開口部はさらに縮小し、ついには球型のリポソームへと復帰変形した。 タリン濃度の上昇によってカップ型リポソームがシート状へと変形するが、これはカップの開口部の縁にさらにタリンが結合し、リポソームの表面積は変わらずに、縁の長さだけが伸長した結果であると考えられる。タリンが膜の縁に局在することは蛍光タリンを使って証明した。 以上の結果により、タリン濃度を調節することによってリポソームに任意の大きさの穴をあけることが可能になった。単に細胞骨格を入れるためだけではなく、リポソームにさまざまな超分子などを封入する技術として、医学方面の利用を含めてこの系は諸来有用になるものと思われる。
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[Publications] A.Saitoh et.al.: "Opening-up of liposome membranes by talin." Proc.Natl.Acad.Sci.USA.95. 1026-1031 (1998)
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[Publications] T.Umeda et.al.: "Theoretical Analysis of Shape Transformations of Liposomes Caused by Microtubule Assembly." J.Physical Soc.Japan.67. 682-688 (1998)
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[Publications] T.J.Itoh et.al.: "Phosphorylation States of Microtubule-Associated Protein 2(MAP2) Determine the Regulatory Role of MAP2 in Microtubule Dynamics." Biochemistry. 36. 12574-12582 (1997)
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[Publications] T.Ikeda et.al.: "Self-assembly of Capping Protein,FliD,of Bacterial Flagella into an Annular Structure." J.Mol.Biol.259. 679-686 (1996)
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[Publications] 金子智行、他: "微小管と膜小胞の挙動" 蛋白質核酸酵素. 42. 1215-1220 (1997)
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[Publications] 金子智行、他: "細胞骨格とリポソームによる細胞モデル形成" 表面. 35. 191-197 (1997)
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[Publications] 宝谷紘一: "生体膜" 吉岡書店, 167 (1996)
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[Publications] 宝谷紘一: "タンパク質化学、第6巻" 廣川書店, 316 (1997)