1996 Fiscal Year Annual Research Report
高等植物の器官形成における細胞間シグナル伝達機構の分子解析
Project/Area Number |
08408031
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡田 清孝 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (50101093)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石黒 澄衞 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (50260039)
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Keywords | 細胞間シグナル伝達 / 植物器官形成 / トランスジェニック植物 / シロイヌナズナ / mybドメイン / 根毛形成 / 細胞分化 / プラズモデスマ-タ |
Research Abstract |
本基盤研究は、シロイヌナズナを用いて植物体の細胞間シグナル伝達機構を分子レベルであきらかにし、器官形成における役割を解明することを目的としている。 今年度は、(1)細胞間シグナル伝達機構に関与する遺伝子を同定・単離することを目的として、シロイヌナズナ芽生えの根の器官形成と刺激応答過程に異常を示す突然変異体を単離した。シロイヌナズナは、根の先端部分の物理的な環境変化を感知して根毛の形態を変化させるが、環境の感知ができなくなったと思われる突然変異体を新たに3株(rotl20,rotl24,VW157)分離した。これらの突然変異体では、根端が支持体から遊離して空中に出ても、野生型のような長い根毛を形成しない。遺伝解析の結果から、これらの3株はいずれも異なった遺伝子の変異であり、それぞれ染色体の3、4、5番上にマップされることがわかった。VW157突然変異体は、T-DNA挿入トランスジェニック株の中から選択されたが、突然変異部位とT-DNA挿入とは連関していなかった。これらの突然変異体では、根端で感知した接触シグナルを根毛形成部位まで伝達する機構が異常になったと考えられる。現在、遺伝子単離のために詳細なマッピングをおこなっている。 (2)シロイヌナズナの根の表面細胞には、根毛を形成する細胞(トリコブラスト)と形成しない細胞(アトリコブラスト)の2種類がある。表皮細胞がトリコブラストに分化する機構には、内部に位置する皮層細胞と表皮細胞の連絡が重要であると考えられている。根毛が少なくなるcaprice突然変異体から、CAPRICE遺伝子を単離したところ、この遺伝子産物はMYBドメインを持っているので転写因子として機能すると考えられた。CAPRICE遺伝子は、分化前のアトリコブラストでのみ発現しているが、この遺伝子をすべての表皮細胞で発現するトランスジェニック・シロイヌナズナではすべての表皮細胞から根毛が形成された。この結果は、CAPRICE遺伝子の発現がオートレギユレーションを受けているか、CAPRICE遺伝子の発現量が少ない場合は根毛形成を抑制するGL2遺伝子の転写を促進するが、発現量が多い場合は抑制する可能性を示唆する。現在、GL2遺伝子の上流域でCAPRICEタンパク質の結合部位を捜している。 (3)植物細胞の細胞間原形質連絡構造であるプラズモデスマ-タと細胞間シグナル伝達機構との関連について調べるために、シロイヌナズナの根の表皮細胞にマイクロインジェクションをおこなう実験系を構築している。
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[Publications] Ito,T.: "A serine/threonine protein kinase gene isolated by in vivo binding procedure using Arabidopsis floral homeotic gene prodduct AGAMOUS." Plant & Cell Physiol.38. (1997)
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[Publications] Smith,D.: "Characterization and mapping of Ds-GUS-T-DNA lines for targeted insertional mutagenesis." Plant J.10. 721-732 (1996)
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[Publications] Okada,K.: "Genetic basis of phenotype expression in plants." Plant Species Biol.11. 115-139 (1996)
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[Publications] Narita,S-I.: "Molecular cloning and characterization of a cDNA that encodes protoporphyrinogen oxidase of Arabidopsis thaliana." Gene. 182. 169-175 (1996)
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[Publications] Tanaka,R.: "The third member of the hemA gene famly encoding glutamyl-tRNA reductase is primarily expressed in roots in Hordeum vulgare." Photosynthesis Res.(1997)
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[Publications] 岡田清孝: "植物の形態はどのように形作られるか 植物分子遺伝学の最近の成果" 生物の科学 遺伝. 別冊. 46-54 (1996)
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[Publications] 岡田清孝: "モデル植物の実験プロトコール" 秀潤社, 251 (1996)