1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08451004
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
今井 知正 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (50110284)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野矢 茂樹 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (50198636)
村田 純一 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (40134407)
山脇 直司 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (30158323)
宮本 久雄 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (50157682)
山本 魏 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (70012515)
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Keywords | コミュニケーション / 規則 / 評価と規範 / 権力 / 合意 / 技術としてのレトリック / 日本語の論理 |
Research Abstract |
本年度は、一方で現代の多元主義的思考を検討し、他方で従来の古典的思索を翻訳ないしはコミュニケーションといった観点から検討する、といった多角的な研究が行われたが、そこから、さしあたり次のような知見を得ることができた。まず、プラグマティズム的なモデルによると異なる意味規則にしたがう言語システム間で「理解」が試みられる場合、そこに理解のための規則というものをあらかじめ設定する根拠ないしは必要性は全くないことが明らかにされた。しかし他方、こうした理解に対して「誤解である」などの「評価」を下す場合にはそこには逸脱を許さない規範が厳然として存在する。こうした評価的規範のもつ権力性をどう位置付けが、他のモデルの可能性を探る際の共通の課題として確認された。また、特にプラトンのいわゆるアポリア対話篇の検討を通して課題として明らかになったのが、日常的なコミュニケーションを破綻させてアポリアを招来する「徳」の位相をどう考えたらよいか、また逆に信念ないしは合意が形成されるような言語使用の位相をどう位置付けるか、といった問題である。たとえば、芸術の各ジャンルで表現様式や手法について議論することは有意味であるが、こうしたジャンルを越えてそれらに普遍的なものとして「美」というものを問題にすることが果たして可能ないしは有意味であるのか、また各ジャンルでの有意味性をどう考えるべきなのかといった問題が、伝統的な普遍を志向する哲学的思考の多元主義的思考に対する意味を解明する上での課題として見えてきた。その上で改めて、「信念や合意の形成に関する成功・不成功」という特異な行為論的問題として、レトリックという「技術」の位相が確認された。この他、日常の日本語に即した「日本語の論理」の構築の試みで一定の成果をあげられたことが特筆される
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Research Products
(14 results)
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[Publications] 宮本,久雄: "ハルマゲドンと十字架" エイコーン. 第15号. 58-76 (1996)
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[Publications] 宮本,久雄: "ニュッサのグレゴリオス《雅歌講話》の第4講話" エイコーン. 第16号. 25-35 (1996)
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[Publications] 宮本,久雄: "アウグスティヌスの記憶論" 日本哲学会編「哲学」. 48. 未定 (1997)
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[Publications] MURATA,Junichi: "Technology and the Life-Worlds" 5TH JAPANESE/AMERICAM PHENOMENOLOGY CONFERENCE 1996,Proceedings II. 187-207 (1996)
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[Publications] MURATA,Junichi: "Consciousness and the mind-body problem" Cognition,Computation,and Consciousness(Oxford U.P). 31-44 (1997)
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[Publications] YAMAWAKI,Naoshi: "The Philosophical Thougth of Japan from 1963 to 1996" RECENT JAPANESE PHILOSOPHICAL THOUGHT 1862-1996. 271-287 (1997)
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[Publications] 野矢,茂樹: "自己知の文法" 分裂病論の現在(弘文堂). 45-66 (1996)
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[Publications] 門脇 俊介: "「根底的翻訳」の状況へ" 超域文化科学紀要. 第一号. 43-46 (1996)
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[Publications] 門脇 俊介: "哲学の言葉の翻訳" 翻訳の方法(東京大学出版会). 未定 (1997)
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[Publications] 信原 幸弘: "心・脳・機能主義" 日本哲学学編「哲学」. 第47号. 42-54 (1996)
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[Publications] 信原 幸弘: "認知科学の立場から読む" コンピュータ半世紀(ジャストシステム). 175-243 (1996)
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[Publications] 黒住 真: "日本思想とその研究-中国認識をめぐって" 中国社会文化学会「中国-社会と文化」. 11. 3-28 (1996)
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[Publications] 伊古田 理: "直観形式としての空間および時間" 駒沢大学「文化」. (1997)
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[Publications] 野矢,茂樹: "哲学の謎" 講談社, 204 (1996)